第3章 シャンゼリゼの出会い(二日目)

1.出発
2.バスティーユ広場
3.魔法博物館
4.ノートルダム寺院
5.シャンゼリゼ通り前編
6.シャンゼリゼ通り中編
7.シャンゼリゼ通り後編

5.シャンゼリゼ通り前編〜凱旋門〜 

次の目的地はシャンゼリゼ通り。

シャルル・ドゴール駅というところに出るのだが、昨日飛行機で来たシャルル・ドゴール空港とは一切関係無い。さすが世界史用語集頻度18のド・ゴール。あちこちで名前を聞く。

そして、この巨大な駅でハプニングが起こる。

なんと、いながきが自動改札で引っかかってしまったのだ(またか)

今回の原因は、降りる時に一度切符を通して、出てきた切符をまた入れてしまったという、訳の分からないミスによるものだった。確かに日本では降りる時に切符は出てこないが……

さて、どうするか。もう出てしまった俺とかなめ。立ち往生するいながき。

そこに、一条の光明!

なんと、見知らぬ黒人のお姉さんが現れて、自体を察すると、

「うしろにひっついてきなさい」

みたいなジェスチャーをして、いながきを一緒に出してくれたのである。

なんていい人なんだ、フランス人!

ちょっと我々はフランス人に関する考え方を改めねばならないと感じた。あいつら、いい奴だ。
日本人なんかより、はるかにいいやつだ。下町の人情みたいなのが、パリのど真ん中にもある。

さて、無事に改札を出ると、今度はトイレに行きたくなってくる。
駅の中に、コインを入れて開く公衆トイレがあった。
一回2フラン。40円。背に腹はかえられないので、仕方なく金を払う。

しかし、この国は本当に公衆トイレが少ない。やっと見つけたと思ったら、有料である。
いいのだろうか。俺やかなめは持病「トイレに行きたい病」をかかえているので、こんな国には住めない。

逆に、いながきは一日に二回しかトイレに行かない特異体質なので、フランスに適応できそうだ。

ていうか、今まで黙っていたが実は俺はフランス人である。しかし、持病のためにやむなく日本に亡命してきたのだ。母国を捨てるのは忍びなかったが、やむをえなかった。

そう。俺は今故郷へ帰ってきたのだ!(感涙)

ちなみにいながきは皇族である。これも秘密事項。

 

駅から出るとすぐに凱旋門があった。

arc.jpg (10526 バイト) パリの名所その3 凱旋門

1806年に皇帝ナポレオン1世が命じて作らせ、30年かかって完成した、アウステルリッツの戦いの勝利記念建造物。だがナポレオンはセント・ヘレナ島から死骸となってこの門をくぐった。

 

これはでかい。思っていたよりも遥かにでかい。こんな風に道路の中央から写真が取れるのがこの町のいいところだ。

とりあえず頂上に登れるらしいので、中に入ってみることにする。だが、凱旋門は20本くらい交差している道路のど真ん中にあるので、普通に歩いて辿り着くことはできない。地下通路から凱旋門のある中央の広場に出ることになっているのだ。

で、入り口。入ろうとすると、係のおっちゃんに止められる。どうやらチケットを買ってこなければいけないらしい。
しかし、チケット売り場が分からない。

すると、おっちゃん。

「階段下りて、右下(日本語)

な、何!!? まさか、こんなところで日本語が聞けるとは。
しかも、右下なんて、高度な複合名詞をっ!! やるな、凱旋門入り口のおっさん!

しかし、この後日本語を嫌というほど聞かせられることになることに我々は気づいていなかった。

それはいいとして、言われた場所で、チケットを買う。だが、そこには蛇がのたうちまくったような日本語でこんなことが書いてあった。

「エレベータは壊れてます」

…………??????? ま、まさかこのべらぼうに高い建造物を徒歩で登るのかっ?

 

さすがにこんなところで登山をすることになるとは思わなかった。
ひたすら階段を上る3人。後ろを歩いている子供が力尽きる。フランス人の兄ちゃん、笑いながら休憩。

ていうか、こいつはキツイ。狭い階段で、止まると後ろに迷惑がかかる。しかし永久に続くかのような螺旋階段。上を向いても終わりが見えない。

苦労の末、高さ50メートルの頂上へ。と思ったら、なぜか展示場。売店などがある。

ちょっと買い物をした後、また登る。終わらない終わらない。

やっとついた所にベンチがあった。座り込む3人。疲れ果てて言葉も出ない。すると、さっきのフランス人の兄ちゃんが、微笑みかけながら前を通る。むう、元気だ。しかしさっき彼は休んでいたので、五分五分といったところだ。

いい勝負をありがとう。

さて、頂上に出ると、さすがに50メートルの高さ。

「見ろ、人がゴミのようだ!」

苦労の甲斐あって、眺めのよさに感動もひとしお。パリの町並みと、シャンゼリゼ大通りが一望できる。そうなのだ。凱旋門はシャンゼリゼ大通りの西端。いわば、スタート地点なのである。これから大通りを下っていく。

 

気がつくと、かなめが写真を撮っている。そしてまたしてもカメラマン化するいながき。

かなめ「あれ?そう言えば君はカメラ撮ってないね(いや、カメラは撮らぬ

いながき「そう! 俺なんかもう3枚も撮ったのに

かなめ「やっぱり日頃の行いが出るね。君は信頼に足らない人間なんだよ

るしふぇる「ぬぅ。

と、知らぬ間に人格まで否定されつつ、凱旋門観光は終わった。エレベーター、どう見ても動いてるのに階段を下りる。あまりにもエレベーターが動いているのがバレバレなので、乗ろうとしたら怒られた。くそっ。

さっきの地下道でシャンゼリゼ通りへ戻るのだが、その途中、どう見てもアジアの人間としか見えない大量の女子学生がうろついていた。

るしふぇる「や、やはりあれはジャパニーズか?

かなめ「うーーん。だろうね……

るしふぇる「なんでここまできてジャップに出くわさねばならんのだ。

かなめ「日本人……だろうな

るしふぇる「違うことを祈ろう。きっと香港人だ。

 

すれ違う女子学生(セーラー服だかブレザーだか)。

「山中さんどこいったぁ?」

 

るしふぇる「……

かなめ「日本だ……

香港に山中さんがいることを祈りつつ、我々は凱旋門を後にした。

 

シャンゼリゼ通り中篇に続く