第3章 シャンゼリゼの出会い(二日目)
3.魔法博物館〜寿司〜
いよいよ魔法博物館である。いわば、今回のパリ編のメインイベント。「とりあえずここにさえ行けば、あとはロンドンに行っちゃってもいいや」位の一大スポットである。
地図によれば、魔法博物館はバスティーユから直線距離で約500m。近くを鉄道が走っていないため、ここから歩いていくことになる。パリの町並みを眺めながら、散歩というのも良いものだ。
と思いきや、良くない顔をしている二人。
いながき「さて、次の目的地は……ノートルダム寺院か。
かなめ「えっと、地下鉄に乗って……
まだ言っている。往生際の悪い奴だ。
いながき「俺のおばあちゃんの妹の孫は『ゆみこ』って名前なんだぞ」
……やはりいながきはゆみこと関係があるのだろうか。
バスティーユからは道が9本くらい延びており、さし当たってどれが正しい道なのか分からない。なにしろ、道の標識からしてフランス語。さっぱり読めない。ていうか、地図と表記が違う。
標識と言えば、かなめは標識を表札とまたがったことのあるつわものとして全国的に知られている。
とりあえず、地図上では一番でかい道をいくと辿り着けそうな感じなので、行ってみる。
・・・・・・・5分ほど歩く・・・・・・・どうも違う気がする。
そもそも手がかりなどまるでないのだが、どうも違う。途中にあるはずの教会がない。道のオーラが「ここは違うぜ」と言っておる。一度バスティーユに戻り、再出発。
結局、半端に大きな道が正解だった。道を進むと、どうもどこかで見たような人物の石像が建っている。
るしふぇる「んーーー。なんか、どっかで見たことがあるなぁ。コレ。
かなめ「あーー、確かに。なんだか分からないけど、世界史の資料集で見たことある気がする。さすがパリだ。
いながき「・・・・・・・・・(日本史選択)
近づいて、見てみる。ぜーんぜん知らん名前の人だった。
るしふぇる「いや、見たことなかったかも。
かなめ「またがった。
いながき「・・・・・・・・(ちょっと勝ち誇った顔)
イタリア広場と違って、比較的「街」っぽい街。人通りも多く、店もたくさんある。「古代ローマセット(なんか、古代ローマのグッズがたくさん入っている。紙でできた宝石とかおもちゃみたいなやつ)」「古代ギリシアセット(古代ギリシアの…以下同文)」みたいな子供だましのアイテムがまともそうな本屋にどうどうと売ってる当たりフランスの国民性を疑うが、それはそれで面白い。過激な絵はがきとかもあり、見ていて飽きない。
と、そこに面白い店を発見する。
るしふぇる「あ、すし屋だ……
道端に寿司屋。日本人としてはやはり見ておきたい。一個ずつ単品で売っており、マグロ、イカ、海老など基本的なものは大体揃っている。しかし、朝飯を食ったばかりなので非常に残念だ。
ところで、俺は寿司を食べた記憶はないが、日記の原本には「途中でおすしが売ってた。おいしかった。」と書いてある。不思議である。
パン屋なんかは、やはり結構多い。でかいパンをよく売っている。結構美味しそうだ。八百屋には、見たことのない野菜も多いが、全般にカラフル。シーフードショップには、でかい海老やムール貝みたいな奴が印象的。あとは、全般に洋菓子系だろうか。
と、歩いていくとわき道。地図によれば、この細い道をすすんだところに魔法博物館があるらしい。
るしふぇる「よし、いよいよ魔法博物館だ。
かなめ「ほんとに行くのぉ?
道を歩いていく。……地図によれば、この道を右を向きながら歩いていくと途中にあるはず。
・・・・・・・・・・・・ないやん。
おかしい。突き当たってしまった。ていうか、これはセーヌ川だ。
かなめ「これは、運命が行くなと言ってるんだろ。
るしふぇる「そんなことは、ない!
戻る。今度は、適当ではなく、具体的にどの位置にあるかを確認。
るしふぇる「ここだ。
どう見ても、魔法博物館と言うよりは民家の中庭である。というより、雑貨屋の裏口。
いながき「これは違うだろ・・・・・・
るしふぇる「しかし、地図はこれでいいといっている。
中に入る。中庭のようなものを抜けると、本当に民家。おばちゃんが洗濯なんかしちゃってる。
るしふぇる「おかしい・・・・・・
また道に出る。すると、さっきの雑貨屋の裏で、緑色の髪をした兄ちゃんがいろいろ道具をいじくっている。開店準備のようだ。緑の髪と強そうな体躯がちょっと恐かったが、仕方がないので道を聞いてみる。「魔法博物館」の発音がわからないので、ガイドブックを見せる。恐いが、フランス語は話せないのでびくびくしながら英語で聞く。
るしふぇる「あの〜ここに行きたいんですけど。わかります?
緑の兄ちゃん「んーーー。これは、多分つぶれたね。
ガーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!!!
地図上では、この雑貨屋の側にあることになってるので、間違ってはいないのだろう。
るしふぇる「・・・・・・(開いた口がふさがらない)
緑の兄ちゃん「んーー。あっちのほうの道を、うんたらかんたらする(この辺覚えてない。ていうか、よく分からなかった)と、もしかするとあるかもしれないけど、多分閉まってる
うっそぉぉぉ!!! パリ最大のイベントがぁ!!!
くそっ。笑うなら笑え。これが敗者の姿だ!!
意外といい人だった緑髪フランス人。
気力を失った俺。
嬉しそうな顔の2人。
こうして、時間の余裕がたくさんでき、我々は次の目的地「ノートルダム寺院」へと向かうのであった。
不思議なことその2。日記の原本には、先ほどの寿司に関する記述の上に
「魔法博物館に行って楽しかった」
と書いてある。不思議だ……
次回、ノートルダム寺院。その時、メンバーにも知られざる「チーズ事件」が起こる!!