第5章 勝利の女神(四日目)

1.ルーブル美術館
2.エッフェル塔
3.フランス料理再び
4.大天使ミカエル

4.大天使ミカエル

レストランからの帰り。
ちょっとここには書けないような事が発端になって、喧嘩になる。
それだけなら別にいいのだが、途中サン・ミッシェルという駅での乗換えで、自動改札に俺の切符が入らなくなる

こういうことはフランスの地下鉄では結構あるのだ。
自動改札のため、「入ってない切符を乗り換えに使う」ことは多分不可能。
他の二人は既に切符で改札の中に入ってしまった。

ちなみに時刻は21時ごろ。
結構、絶体絶命な感じである。

なのだが、俺は基本的に窮地に陥っても手段を選ばないことで何とかする人なので、先にホテルに帰ってもらうことにした。

というわけで、急遽始まったパリ最大のイベント
「孤独にパリの夜歩き」が始まる。

さて、どうするべきか。とりあえず、駅を出ることにする。もちろん、切符が通らないのだから駅からは出られないはずなのだが、出口に向かわないことにはどうにもならない。

標識を見ながら、出口を探す。

そして、駅から出た。なんと、サン・ミッシェルは出る時に切符が不要な駅だったのだ。とりあえず、助かった俺。あとは、切符を買ってホテルのある駅にたどり着けば万事OKだ。

外は結構雨が大降りになっていた。しかし、こうなったらこの辺の町を散策するのも面白い。
と、駅の出口の側に何か記念碑のようなものが建っている。

見上げると、それはさっきルーブルで観た絵画とほぼ同じ構図の、大天使ミカエルの彫像を頂く、大きな壁だった。

そうか。サン・ミッシェルって………聖ミカエルなのか……

伝承に曰く、天の三分の一を率いて神に背いた天使長ルシファー。
そのルシファーを神の剣によって滅ぼし、地獄に落としたという大天使ミカエル。
ミカエルはその功績により、全ての天使の頂点に君臨したとされる。
一方、ルシファーは地獄で王となり、魔王サタンを名乗った。

ミカエル=ミッシェル=マイケル などと、分かっていてもいきなり言われると気付かない。

激しく雨降るパリの闇夜に、俺を見下ろすサン・ミッシェルの像。その威厳に満ちた姿に、背筋が震えた。



しばらくサン・ミッシェル付近を歩くが、そろそろホテルに帰らねばならない。もしかしたら他の二人が心配していることも考えられる。

そこで、最後のカルネを使って地下鉄へ。目的地はイタリア広場なのだが、どうも電車がないようだ。そこで、ちょっと遠いがアウステルリッツからホテルまで歩いていけることを思い出した。アウステルリッツは大きな駅なので、まだ電車も走っているはずだ。

アウステルリッツ駅に到着。雨の中を延々と歩きつづけ、途中ケンタッキーに寄ったりして日付が変わるくらいにホテルに到着。さすがに疲れてしまった。

というわけで、パリでの3日間は終わり。明日はイギリスに移動する。
だが、パリの4日目がまた大変なのであった。
意外なところで、今日の話が伏線になってくるのである。

次回、移動日の悪戯へ続く