第5章 勝利の女神(四日目)

1.ルーブル美術館
2.エッフェル塔
3.フランス料理再び
4.大天使ミカエル

2.エッフェル塔

次の目的地は、エッフェル塔。初日にシャンゼリゼ通りから見えた、パリのシンボルエッフェル塔である。今度は、間近で見るのである。

ビラケムという駅から、降りるとすぐにその塔はあった。それほど時間的には遅くないはずなのだが、冬の日照時間が短いため、外はすっかり暗くなっている。そんななかで、巨大なエッフェル塔は格別に綺麗だった。




これと比較されるのは、やはり東京タワーとだろう。帰国後、しばらくして夜の東京タワーを見る機会があったのだが、エッフェル塔の方が綺麗だったと思う。高さは東京タワーとほとんど変わらないのだが、エッフェル塔の方がゴージャスな感じがした。何よりも、「下から見たエッフェル塔」である。

行く機会があったら、夜のエッフェル塔を是非「下から」見てもらいたい。俺は、震えた。巨大な鉄骨が精巧に組み合わさって出来る、複雑な幾何学模様。

個人的な話になるが、俺は小さい頃からよく夢で「何か恐ろしいもの」にうなされてきた。それが、何なのかは目覚めると思い出せない。だが、それは繰り返し繰り返し俺の夢に登場した。断片的な記憶をたどると、それは「お化け」とか「殺人鬼」とか、そういう種類のものではなかった。ただ、とてつもなく複雑で、巨大なものだった。

エッフェル塔の幾何学模様は、その「何か恐ろしいもの」に限りなく近いものに見えた。自分が何に恐怖を感じているのかは分からない。だが、「物」を見て、これだけ圧倒されたのは生まれて初めてだった。そして、そのエッフェル塔の幾何学模様は、幾度となく夢に出てきた「何か恐ろしいもの」を思い出させるのだ。

実は、帰国してから、東京タワーでも同じ物が見られると思っていたのだが、東京タワーとエッフェル塔はつくりが違うらしく、下から見た姿がかなり違っていた。残念である。

という話は、他のメンバーは知らない。だが、そういう曰くがあるにしろなきにせよ、3人とも夜のエッフェル塔には純粋に感動した(と思う)。


特別エッフェル塔に「登る」理由も無かったので、しばらくエッフェル塔を眺めた後、側を流れるセーヌ川のほとりに脚を運んだ。もしかしたら、セーヌ川下りで大分近道が出来たりするかもしれない。

 

セーヌ川。下るのに50フラン。何故か貧乏モード入ってた我々は、即行却下である。
すると、見知らぬ(知りあいにフランス人は一人としていないのだが)フランス人夫婦に、声をかけられた。
どうやら、写真を撮って欲しいらしい。パリ入りしてからは何故かカメラマン化しているいながき、やはり今回もカメラを預けられる。
暫くカメラを観察するいながき。そして、彼の口から出た言葉は……

「これ、どーやってフラッシュたくんすか?(日本語)

投げやりである。

それでもその後英語で話して何とか通じたらしく、フランス人夫婦、一生懸命説明する。
だが、いながき、フラッシュの半押しがわからない。
説明を続けるフランス人。既に意地になっており、絶対に他のフランス人に撮ってもらった方が早いのに我々に撮ってもらおうと必死の努力。
結局、半押しが分かった俺が写真を撮った。
今回の旅行、初めてのカメラマンであった。

結局セーヌ川下りはせず、我々は晩飯を食うために地下鉄に向った。

次回、3.フランス料理再びへ続く