第4章 寒空のヴェルサイユ(三日目)
1.出発
2.ヴェルサイユ
3.宮殿にて
4.フランスのマック
5.フランス料理
1.出発〜いつものバカ三人〜
誰かが言った。俺らは、ヨーロッパのほうが暮らしやすいんじゃなかろうか。
誰かが言った。俺らは、ヨーロッパ人なんじゃなかろうか。
誰かが言った。ああ、生まれるべき国を間違えたなぁ。
夜寝て、朝起きる。ヨーロッパに来て、実に健康的な生活を送る3人は、不幸にも時差のせいで、日本では夜行性を余儀なくされるという運命の皮肉を嘆いた。それにしても、7時半だというのにこの国は本当に暗い。
さて、日本語のおかしいかなめだが、日本語のヒアリングがおかしいのはいながきである。俺よりもさらに朝早く起きて、朝風呂から出てきたかなめ。
かなめ 「今だけだよ、長風呂ができるのは。
いながき「え?いながきがきれいだ?
誰一人としてそんなことは言っていない。
かなめ 「電話だよ
いながき「電話代?
微妙に違う。ニアミス。
まぁ、そんなことはどうでもよくって、それよりも大変なことが起こった。いながきが風呂に入り、しばらくしてからのことである。
いながき「大変だ!!!
大変そうである。中から風呂のドアを開けるいながき。すると……
びしょぬれ。
ユニットバスの床が、目も当てられないくらいびしょぬれである。
かなめ「な、何をやったんだ?
いながき「いや、なんか水がこぼれて……
るしふぇる「カーテンは、中に入れてたのか……?
いながき「何を?あ、これ?これがどうかしたの?
そりゃあびしょぬれさ。
何がすごいって、何度も行ったかなめの下宿先のユニットバスでは、一度もやらなかったくせにヨーロッパに来てこれをやるか。
いながき「いや、考えたこともなかった。カーテンが中か外かなんて、二分の一だよ。
二分の一の確率を全てクリアしてきたいながき。ツワモノだが、本番に弱いと見た。
るしふぇる「いいから早く拭けよ。
いながき「いやー、ホント面白いな俺わ。
るしふぇる「いいから拭け!!
こうして、微妙に早く起きたのにすっかり出発時間が過ぎ、だらだらと朝飯を食って(やはりフランスの朝飯は美味い)ホテルを出る。今日の目的地は、ベルサイユである。そう。ベルサイユのバラの、あのベルサイユ。
だが、とにかく我々はフランスフランを手に入れなければいけない。そこで、とりあえず近場で大き目の駅「オーステルリッツ(アウステルリッツの三帝会戦のあれ)」で両替をすることにした。恐れていたほど手数料は取られなかったので、その辺の両替所で平気なのかもしれない。
ヴェルサイユに行くには、パリから出なければいけない。そのため、前に紹介した回数券「カルネ」は使えず、別に乗車券を買うことになる。遠い割には思っていたよりも全然安く、拍子抜けする。
電光掲示板によれば、ヴェルサイユ行きの電車の出発は10:46だ。でも、電車は来ない。その時……
………はっ?
突然電光掲示板が変わる。なんと、ヴェルサイユ行きの電車の出発が10:47になった。
おいおい。電車が遅れてるからって、予定のほうをなかったことにするのか……
フランス人の強引なテクに脅威を抱きつつ、我々はヴェルサイユ行きの電車に乗った。
次回、2.ヴェルサイユへ続く