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Origin of Lucifer |
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そもそも、ルシファーはどこからきたのか。
聖書の宗教が発生したカナアンには、本来ウガリットを中心とした文化圏があった。
そこでは、神はエルと呼ばれ、そしてバアルと呼ばれる主がいた。
ウガリットから出土した粘土板には、ルシファーの原型と思われる「シャヘル」についての言及がある。
エルの子であるシャヘル(夜明け)とシャレム(夕方)は、双子だった。
シャヘルは自分より高位の太陽神の存在に嫉妬し、天の玉座を奪おうと反乱を起こす。
だが、それには失敗し、稲妻のように地に落とされるのである。
明らかにイザヤ書のルシファーにまつわる記述の起源が、シャヘルの文書に残っている。
ヘレルの息子なるシャヘルよ、
いかにして天より隕しや。
汝さきに心のうちにおもえらく、
われ天にのぼり、
わが位を天極の星の上にあげ、
北の極なる集会の山に座し、
雲の背に乗り、
エルヨンのごとくなるべしと。
また、カナアンにはこれと似た話がほかにもある。
かつて、主神バアルが神々の山・サフォンからその姿を消したとき、
灌漑の神にして「恐るべきもの」と呼ばれたアッタル(アシュタル、アシュター)が、
自分こそ神々の王だと、サフォンの山に登った。だが、結局彼は王にはふさわしくなく、
冥府(あるいは地上)に降り、そこで王になったという。
アッタルはそもそも夜明け、そして宵に現れる「金星」の神であり、イザヤ書の記述と
何らかの関係があったと考えられる。