第3章 トレド(2日目)
(1)スペイン初食事
(2)カテドラルとナゾの乗り物
レストランの支払いを済ませ、カテドラルの中に入る。
前回載せた写真は入り口ではなくて、もっと分かりにくいところにあった。
カテドラルの「出口」にいた守衛の兄ちゃんに「どこから入るの?」と聞いたら「right, right, right」と3回曲がれ的な案内をされた。その通りにしたが、辿り着かなかった。言葉の壁は厚い。
仕方なく適当に周囲を回っていると何とか入り口らしきモノを発見。
トレドの街は狭くて迷路みたいになっているので、思う通り進めないのだ。
というわけで、6ユーロぐらいのチケットを買ってカテドラルに入場。
おおおおっ
正直、圧倒された。
とてつもなく広く、暗い聖堂内を美しい無数のステンドグラスから入った光が優しく照らす。そして静かでひんやりとした空気が、中央に磔刑のイエス像がそびえる荘厳な聖堂の神秘性を際だたせる。
現在のスペインカトリック首座大司教座のあるトレドのカテドラル。
いわゆる総本山である。
この壮大な大聖堂の完成は1493年だが、作るのに250年以上かかってるらしい。サグラダファミリアもそうだが、スペイン人は長い時間かけて建築物を造るのが好きなんだろうか。
大きな建物っていうのは今建てると10階建てとか20階建て、みたいな話になるけど、こういう大聖堂ってドカンとワンフロアで天井が遙か彼方にあるっていうのがすごく贅沢だと思う。
大司教座らしく、歴々の大司教の肖像画や彼らが纏っていた装束、冠などが展示されている。衣装のデザインは毎回変わるようだ。一種の博物館にもなっている。
うーむ。パリのノートルダムよりすごいかも。
さて、2周ぐらいして入り口から出てくる。
あれ。
さっきの守衛の兄ちゃんの出口にはどうやって出るんだろう。
まぁいいか。。
さて、次に向かったのは、サント・トメ寺院。
エル・グレコの絵が有名らしい…のだが、早速道に迷ってヘンな広場に出た。
ソコドベル広場という場所のようだ。
ベンチに座り、ペットボトルの水を飲みながら地図を広げていると……
ヘンな乗り物に乗って広場を回っている少女が目に付いた。
何だ?
あ。
これが噂の…セグウェイか!!
曰く、AmazonやアップルのCEOがこぞって絶賛したものの、一台100万円ぐらいするのに公道を走れない国が多いため、3年間で6000台しか売れなかったという「未来の乗り物」セグウェイ。
ブッシュ大統領が乗って転倒したことや、そのブッシュが小泉元総理にプレゼントしたことでも有名だ。
まさか実物をこの目で見ることがあるとは。。
見た感じ、小回りのきく自転車?な動きをしている。
動きは一輪車に近いかも。
自転車よりスピードが出る上にブレーキがついてないので、日本で走らせるようになるのは難しいようだがスペインでは公道を走れるのかも知れない。
さて、地図によるとどうやら西に向かっていたつもりが思いっきり北東に進んでいたらしい。
珍しいモノを見て満足した俺は、そのまま広場近くにあるトレドのシンボル、アルカサルへ。
アルカサルとは知ってる人は知っている千葉ニュータウンにあるアレのことだが、スペイン語で「王城」を意味するらしい。
昔はここに王様がいたのだろうか。
今は軍事博物館になっているようだが、残念ながら閉館中のようだ。
(3)サント・トメ教会
さて、古都トレドに一番多いお店は何でしょうか。
BAR?
両替所?
土産屋?
正解は…
武器屋ですw
といってもお土産屋なんだけどね。
街を歩いていると、ものすごい圧倒的な確率で武器屋に出くわす。
もちろんレプリカなのだが、この小さな街に10軒や20軒じゃ効かない。
そのぐらい武器の売っている土産屋が多い。
アッサラームやエンドールにすらここまでの武器屋はないだろう。
長剣からナイフまで、やる気を出したボルタック商店ぐらい並んでいる。
▲日本刀もあった。誰が買っていくのだろう。。
▲やりすぎだ。
さて、さっき思いっきり逆方向に進んだ歩みを元に戻してサント・トメ教会まで歩く。
それにしても暑い。まだ40℃近くあるが、空気が乾燥しているのであまり汗をかかない。
汗をかいたそばから蒸発してるんだろうか。
サント・トメ教会は14世紀にオルガス伯爵という人が再建した教会。
聖なる大工のトメさんというワケではない。
入場料は2ユーロぐらいだったかな。小さな教会だが、この町で画風を確立したエル・グレコが残した『オルガス伯爵の埋葬』という絵がある。
さっきプラドでエル・グレコ好きになったので、折角だから見ていこうと思った次第だ。
上部にイエスを配し、光と影を印象的に駆使して天上と地上を分けた縦長の構図はさっきプラドで見たスタイルに似ている。
教会を出て、近くのお菓子屋に入る。
店名はその名も「サント・トメ」。13世紀にアラブから伝わったマザパンというトレド名物のお菓子で有名らしい。明日の朝食用に8個入り一箱買ってみた。
というわけで、トレドも一通り回ったので、そろそろマドリードに戻ることにしよう。
ソコトレインという巡回バスやリアルのバスも回っているのだが、乗り方と行き先が分からないので地図を見ながら地道に歩くことにした。
来るときは上り坂だが、帰りは下り坂なので熱いけど何とかなるだろう。
思ったのだが、ガイドブックって行き方は結構詳しいんだが帰り方が分からないことが多い。行けたんだから帰れるだろう、という訳にも実際にはいかないのだ。
危うく道に迷ったりもしたが、何とかバスターミナルまでたどり着いた。もう18時30分頃だったが、相変わらず34℃もあった。
▲バスターミナル内のハム専門店
行きよりも帰りの方がバスが混んでいて、道も渋滞していた。
暑くて仕方なかったが、帰りはほぼ直通だったので来るときと同じような時間で帰ることができた。
さて…晩飯を探す旅に出るかなぁ。
(3)サント・トメ教会
バスで一時間半かけて、マドリードに無事帰還。
晩飯を求めて、南バスターミナル直結のメンデス・アルバーロ駅からソル駅へ。
駅を中心に道が10本も放射線状に伸びているという、方向音痴泣かせの駅だ。
夕食の目的地はボティン。
1725年創業で、ギネスブックにも登録されている「世界最古のレストラン」らしい。
店に行く途中、マヨール広場に出た。
スペインにはよく、こんな風に建物に囲まれた広場があってオープンカフェというかオープンバルが出ている。すごい活気だ。
狭い路地などをうろつき、辿り着いたボティン。
木で作られた入り口には年期を感じる。
とりあえず中に入ってみると、中は案の定満員だ。
受付のおっちゃんに時計を指さされ「22時ぐらいになったら来い」と言われた。
1時間半つぶすのか。。
他にアテもなかったので、出直すことにした。
この周辺で何か面白いところはないかな。。
地図を見ると、近くに王宮というのがあるらしい。
実はスペインは王国で、フアン・カルロス一世という王様がいるんだそうだ。
政体は立憲君主政らしい。日本や英国に近いのかもしれない。
王宮に向かう途中、広場で決闘をしていた。
闘牛士VSフラメンコダンサーだ。
どんな異種格闘技だ。
演劇か何かの練習だろうか…?
熱戦を見届けることなく、王宮とその横にあるアルムデナ大聖堂を見に行った。
さすがにもうこの時間は中に入れないが、21時なのにこの明るさは日本じゃあり得ない。
時間がまだ有り余っているので一度ホテルに戻り、荷物を置いて再度ボティンへ向かう。
10時を回っているので、さすがにもう空いているだろう。
と思ったら、ボティンの入り口の前には人だかりが。。
客、増えてるし。
店に入ると、予約はしているかと聞かれた上で「11時に来い」と言われて追い出された。
マジッすか!!
店の前で作戦を練る。
確か営業時刻が24時までのハズなので、次に入れなかったら食いっぱぐれるなぁ。
再度ボティンに戻り、さっきのおっちゃんに「予約させてくれ」と頼んだ。
すると名前を聞かれ、再び「11時に来い」と言われる。
最初からこうしていれば良かった…のか。
それにしても流行ってるなぁ。。
1時間その辺をうろうろし、時間を潰す。
何しろスペイン、特にマドリードは治安が悪いと聞いている。あまり夜中にうろつきたくないのだが、基本的に取られて困りそうなモノはホテルに置き去りにしてきたので、最悪命さえ取られなければどうにでもなる。まぁ、なんだかんだで人通りもある道なのでまだ大丈夫だろう。
ボティンの向かいには「串焼」の赤提灯がかかった和食屋(居酒屋?)があって、金髪のおねーちゃんが器用に箸を使いこなすのが店の外から見えた。うーむ。グローバル。
で、夜の街を探索していたら迷ってしまい、BARに入って道を聞いてしまった。
マドリードは結構道が入り組んでいてややこしい。
というわけで11時。三度ボティンへ。
おっちゃんは覚えていてくれて、待機用の席に案内してくれた。
「Magic…サン?」
「Si」
そう言うと、おっちゃんは日本語メニューを差し出した。
粋な計らいだなぁ。
程なく2Fへ案内され、席に着く。
世界最古のレストランの看板メニューは、子豚の丸焼き。
もちろん、一人につき一匹子豚が来るわけではないが、かなりの数のお客が子豚の丸焼きを注文しているようだ。
ガスパッチョと子豚の丸焼きのセットを注文した。
やっぱりガイドブックよりちょっと値段が高かった。
セットで35.9ユーロ。。
ヨーロッパでキケンなのは、何となく100倍しちゃうところだ。
35.9×100で、3500円ぐらいか。。まぁいっか。
みたいな。
そうではない。成田で両替すると、1ユーロ=170円ぐらいなのだ。
てことは、大体6000円ぐらいである。
…高いな。。
世界最古のレストランだからしょうがない、という解釈ならまだ良いんだが、どちらかというとこの店ってリーズナブルな方なのだ。
それぐらいスペインの物価は高い。
さて、そんなリッチな夕食はこんな感じ。
まず、ガスパッチョ。これは比較的有名なスペイン料理だ。
野菜をすりつぶしたような感じの冷製スープ。
最初は具のない状態で運ばれてきて、後から給仕がキュウリ、クルトン、トマトなどのサイコロ切りをどさっと載せてくれる。
味は…やっぱり何とも似ていない。すっきりしていて不思議な味。
ちょっと薄味だろうか。
続いて本命の子豚の丸焼き。
人数が多い場合は、丸状態の姿を見せてくれる。
ガイドブックなんかには頭も付いた丸々の状態の写真が映っていることが多いが、さすがにグロテスクなのか原型が推測しにくい状態で木の皿に載っていた。
この子豚の丸焼き、特筆すべきは皮だ。
豚の皮はコラーゲンの固まりだという話をよく聞くが、角煮のようにとことん煮込む料理は見かけても根気よく焼き上げる料理というのはあまりお目にかかれない。
丸焼きの皮がどんな感じなのかというと、中の油分が抜けて、サクサク状態になるのである。
原型は残っているのに、ナイフを入れるとサクッといく。
口の中に入れると、ちょっとオドロく。スナック菓子のようにサクサクしてるのだ。
昔『美味しんぼ』でも、豚の丸焼きは皮がサクサク状態になるのが最上品だといっていた。(中華の話だったが)これがまさにその状態だ。
肉もジューシーでとても美味しかった。丸焼きらしく、豚の尻尾が付いてたのもご愛敬。
あまりくどくなく、シンプルだがとても珍しいものを食べさせてもらった。うん。
最後に出てきたデザートはアイスクリームのチョコソースだったが、これがまた美味しかった。ジェラート状でクリームチーズの風味のあるバニラアイスクリームに濃厚なチョコレートがかかっていて、隙のない味だ。
なるほど。サービスもいいし、店の活気もある。無論料理も美味しい。
残るレストランには残る理由がちゃんとあるのだなぁと感心した。
ボティンの日本語メニューを拝借し、十分満足して店を後にした。
▲世界最古のレストランの日本語メニュー。言ってくれれば中身をお見せしますw
そして気づけばもう夜中の1時。
予定の24時に閉まらないボティンにまだまだ大量に残っていた客を思い浮かべ、平日の夜なのにスペイン人は明日大丈夫なのだろうか?
などと余計な心配をしながらホテルへ戻るのだった。
明日はグラナダだ。