第5章 グラナダ(3日目)
(1)グラナダへ
マドリードにもトレドにもあったが、グラナダにもやはり大聖堂カテドラルがある。
ホテルからは割と近いのでいってみたのだが、シエスタタイムらしく開いてなかった。
仕方ないので時間つぶしも兼ねて昼食にすることにした。
カテドラルの近くで結構本格的なパエリアを出しそうな感じの店を見つけ、テラス席に入ってみた。「注文後30分かかります」と書かれていて期待できそうだ。
ここではサングリアとサラダ、ミックスパエリアを注文。
何とコレで50ユーロぐらいする。料理2品なのに8000円だ。
物価が高いのもあるのだが、問題はパエリア。
パエリアは鉄鍋に入って出てくるので、大抵の店は2人前からになってしまう。一人前13ユーロでそれでも結構するが、2人前だとそれだけで4000円。
スペイン旅行は2人以上で行かないと金がかかって仕方ないと思う。
ちなみに、パエリアは現地語で「パエージャ」とか「パエーリャ」と発音する。
らしいのだが、パエリアとしか聞こえなかった。
まぁどっちでもいいのだろう。
サングリアはスペイン名物のワインカクテル。ワインに柑橘類などを入れた飲みやすいドリンクだ。
元々余ったワインを保管するような目的らしく、基本的に大して高くない。BARにもカフェにもレストランにも大抵置いてあるが、どちらかというと観光客向けなのかも知れない。
今回の旅でサングリアはかなり飲んだ。店によって味がかなり違うのが面白い。
概して安いBARの方が味に期待できる気がする。
サラダはフツーのサラダだが、味付けがなくて塩・胡椒・オリーブ油・ビネガーがビンで出てくる。勝手に味を付けろと。これはこれで悪くないんだけど、コレ一皿で2000円近くするのでもう少し…何とかして欲しいなぁ。
さて、満を持してパエリアが登場。
でかっ
さすが高いだけあって豪華だ。
大エビ、小エビ、ムール貝、アサリ、イカ、牛肉、豚肉、鳥肉。
トマト、パプリカ、グリンピースなど野菜も沢山入っている。
とにかく入れられそうな具材は全部突っ込みました、そんな印象すら受ける。
パエリアってピラフに近いイメージだったのだが、実際食べてみると水分が多い。
リゾットを釜に突っ込んだような感じだ。
味つけは結構濃いめで、アルデンテばりにちょっと芯の残った米がとてもおいしかった。
さすがに半分ぐらいしか食べられず、かなり残すことになってしまったが。
結構味が強いので、しばらくパエリアは良いかなという感じにもなった。
スペインではパエリア三昧のつもりだったんだけどなぁ。
ところであまりに暑いので、気を利かせてか店員が食事中、テラスの中を走るパイプから霧のように水が撒いてくれた。確かに涼しいのだが、普通に水が皿の上にかかる。衛生上どうなのだろうか。。気にするヒトは気にする気がする。
満腹になった上に、大量のサングリアを飲んで酔ってしまい動けなくなったので、ホテルに待避した。どうせ観光場所も閉まってるしね。
というわけでしばらく仮眠を取り…
外のBARの喧噪で目覚める。何と4時間ぐらい寝てしまっていた。。
もう6時半??
ただ、前も書いたようにスペインの一日は長い。
これからカテドラルを見に行けばいいのだ。
再びカテドラルに向かう途中、スパイス屋を見かけた。
サフランや唐辛子、胡椒など色んなスパイスを量り売りしている。
と、面白いモノがあった。
「CURRI」
これは間違いなくカレー粉だろう。スペインにもあるんだなぁ。イギリスから入ってきたのだろうか?
カテドラルに近づくと中から聖歌が聞こえた。
どうやらミサをやっているようだ。お陰で入場料が無料だった。
ただ、ミサの間は椅子などの配置が変わってあまり中を見て回れないので、良し悪しだなと思った。
隣にある王立礼拝堂に入ると、フェルナンド2世とイサベル1世の墓があった。
大理石で作られた豪華な棺の下には階段があり、実際のお棺を見ることができる。
こ
の二人、「カトリック両王」と呼ばれていて、観光していると頻繁に登場する。カスティリアの女王イサベルと、アラゴン国王フェルナンド2世が結婚すること
でスペイン王国が成立したのである。単純に王と王妃という関係ではなく、2国家の君主同士の婚姻のため、併記されるようだ。
ちなみにイサベルはコロンブスの新大陸進出の援助をした当事者としても知られている。
ネットで調べると「援助は指輪一つだけだった」と書いてあるけどw
(3)グラナダへ
このグラナダという街は、「スペインのフライパン」と呼ばれるアンダルシアと呼ばれる南部地域にある。この季節、19時になっても30℃を下らない。
ヨー
ロッパにおけるスペインの最大の特徴は、ジブラルタル海峡を挟んでアフリカ大陸の目と鼻の先にあるという立地だろう。日本人は何となくヨーロッパとアフリ
カは完全に切り離された地域というイメージを持ってしまうが、世界地図を見るとモロッコとスペインは地中海を挟んで最短で14km。対岸が見えるぐらい近
い。瀬戸内海が最短15kmぐらいと考えるとイメージしやすいと思う。
そういったわけで、スペインは長い間ジブラルタルを越えてやってきたイスラム勢力と、東のローマカトリックによる国盗り合戦の歴史があった。
だからフランスやイタリア、ギリシャなど他の地中海世界に比べると、建築や料理など幅広くイスラムの文化の影響が見られる。今朝のマザパンもまさにその一つだし、この町には広いアラブ人街があってトルコ料理の店も多い。
というわけで、20時も過ぎたというのに相変わらず日が高いグラナダ。折角なので世界遺産でもあるアラブ人の街「アルバイシン地区」を見に行くことにした。
グラナダの中心地はヌエバと呼ばれる小さな広場で、バルやトルコ料理店などの飲食店が並んでいる。地下鉄などはないので、このクソ暑い街の移動はヌエバ広場を起点とするバスが基本だ。
31番だったか32番のバスに乗り、1ユーロ払うとバスは狭い道を突き進み、グラナダ北部のアルバイシン地区に向かい始める。
この町のバスは驚異的だ。
ゼッタイにバスなんか通れないと思える狭くて曲がりくねった坂道を、平気な顔で切り抜ける。この街に来たら用が無くても一度バスに乗ってみて欲しい。
しばらくすると白壁が綺麗なアルバイシン地区へ。このエリアは道がややこしくて迷路みたいになっているので降りずにそのままバスで戻ってくるつもりだったのだが、他の乗客が一カ所でドカっと降りたのでつられて下車してみた。
他の観光客について行き、サン・ニコラス教会の脇の階段を上ると、展望台になっていた。
ダロ川をはさみ、対岸に見えるアルハンブラ宮殿。
これは…絶景だ。
「世界一美しい建物」と呼ばれるアルハンブラ宮殿。
そのアルハンブラ宮殿を一番美しく映すのがこの高台かもしれない。
それぐらいの絶景。
写真からは伝わらないと思うので、この街に来ることがあったら是非行ってみて欲しい。
珍しく景色を見て感動した。
さて、高台でスムージーなどを飲んだ後、超絶テクニックのバスに乗ってヌエバ広場まで降りていく。
ちなみに本数は結構あるのであまり待たされることもない。
昼のパエリアが胃に残っているので、晩飯は控えめに抑えることにした。
バル街にあるホテルなのでバルデビューすることにしよう。
この旅行記にも、キーワードとしては何度か登場したバル。
いわゆるBARなのだが、スペインのバルは夜はもちろん大抵は朝も昼も営業している。
必ずしも酒メインというワケでもなく、カフェ兼一杯飲み屋みたいな感じ。テラス席が用意されている店も多い。床にゴミが散らばってる汚い店も多いが、むしろ「おいしいBARのバロメーター」なんだそうだ。
どの街でも見かける社交場で、ある意味最もスペインらしい場所だと思う。
何しろこの国は暑いので、疲れたらフラッと入ってサングリア飲んで出てくることがよくあった。大抵のBARにはサングリアが置かれている。
ホテルの近くの適当に入ったバルで、サングリアと「サクラモンテ風オムレツ」を注文する。サクラモンテの意味は分からなかったのだが、どうやらグラナダ北部の地名らしい。
スペイン風オムレツは2人前と書いてあった。昼間の轍は踏みたくないw
ちなみに普通、バルでお酒を頼むと大抵簡単なタパスが付いてくる。
タパスというのはスペインの小皿料理で、語源は「鍋のフタ」だとか。
鍋のフタに載せた突き出しみたいな料理が料理が発展していった物らしく、色んな種類がある。
バルだと日替わりメニューを見て頼むことが多いが、お酒に付いてくるタパスは何が出てくるか完全にランダム。日本の居酒屋の突き出しと違い、一杯目と二杯目で違うものが出てくるのも楽しい。
というわけでこれがサクラモンテ風オムレツ。
普通のオムレツだが、具だくさん。ソーセージやら肉類が入っている。味が濃いめだが、なかなかにおいしい。
あとはピンチョス。意味は「串」で、フランスパンの上に何かを載せたもの。
多分この国で一番食べたのがコレ。やたら色んな店で登場する。種類は無数にあって、手軽でおいしい。サングリアを2杯飲んだので、チーズと炙った肉の2種類が出てきた。
ドリンクのメニューが無かったので注文は適当だったのだが、精算したら一杯1ユーロだった。タパス一品とはいえ、食事が10ユーロで収まったのは初めてだ。庶民向けのバルはやっぱり利用しやすい。地方都市だしね。
というわけで、夕方昼寝したのに酒飲んで眠くなってしまったので、ホテルに戻って朝まで爆睡。といっても相変わらず外のバル街はうるさかったのだが。
飲み会のあと、寝床が近いことほど幸せなことは人生でそう無い。(格言)