第三章 霧の摩周湖

1.最も北海道
2.釧路湿原

3.霧の摩周湖

<本日の予定>
・釧路で昼飯
・摩周湖の霧を晴らす

1.最も北海道

5時ごろ起床。洗顔などしていると、たけしがなにやら飲んでいる。

るしふぇる「何それ?

たけし「北海道限定コーヒー

るしふぇる「うーむ。限定に弱い日本人……


しかし俺も日本人の端くれであり、誘惑に負けて自販機にコインを入れる。

たけし「なんだけど……まぁいいや

るしふぇる「……?


おぉぉっ!?

危うく、ホットを買いそうになってしまった。ちょっと離れたところに、コールドのボタンが会った。

たけし「あ、冷たいのあったんだ……

その言葉も聞き漏らさなかった。
北海道とは言え、朝からホットをかますほど外気は冷たくないのである。予定通り、たけしはホットを買っており、

「ホットが飲みたかったんだもん」のセリフも負け惜しみ度100%の響きでしか聞こえない。まさに勝利者の気分。争奪戦で言えば、1位と5位の差はつくであろう。

さて、問題の味であるが、何はともあれ甘い。とにかく甘い。千葉県限定マックスコーヒーよりも甘いのだからビックリである。つまり、千葉県は北海道に敗北を喫したのだ。ああ、くちおしや。


ともあれ、出発である。ラジオ体操にも勝ってしまうくらい早起きさんな我々は、ちょうどラジオ体操が始まるんだか終わるんだかの時間帯に、日勝峠を越えた。その途中に見えた景色が、何とも美しかったので、車を止めることにした。

眼下に広がる果てしない雲海。そして、その上にも広がる雲、雲。そこに挟まる空間を、夜明けの太陽が赤く照らす。まさに絶景である。

もうしばらく進むと、展望台があった。すでに若くないのだが、そこはそれ、老体に鞭打って頑張って登る。先頭を歩いていたので気が付かなかったのだが、たけしが後ろの方で見知らぬおじさんに

「生徒さんをお連れですか」と言われたらしい。なんと、たけし「先生」扱いされている。って、つまり残りのメンバーは生徒扱いらしい。何気に家庭教師も塾講師もやってないたけし、実は人生初の「先生」。

展望台での景色は、素晴らしかった。雲海の下に、緑一色の田園風景が広がっている。その雲と地上の境界が、見事なまでに幻想的なんである。

展望台の入口には、こう書いてあった。

「ここが最も北海道らしい景色です」

なんと、北海道についた瞬間に「最も北海道らしい景色」に到達してしまったのだ。いわば、北海道を極めてしまったのだ。むぅ。これ以降の景色は、全てナンバー以降なのである。嬉しいやら悲しいやら。

次の目的地は釧路なのだが、ちょっと時間があったので「はるにれの木」というところに寄っていく事になった。

もともとはトイレに降りただけなのだが、近くにそういう名所があるということで、寄ってみる事にしたのだ。
ちなみにそこのトイレは、紙がない、水が出ない、とにかく汚いという見たこともないくらいひどいトイレだった。北海道での辛い思い出である。

はるにれの木は、ちょっと奥まったところにあった。
オザワゴンで近くにより、歩いて近づいていくことになる。観光地的には、かなりしょぼそうなオーラが立ち込めていたのだが、行ってみたらやっぱりしょぼかった。どうも、この木は日立の木の初代に当たるらしい。有名な「この木何の木気になる木」の、日立の木である。今の木は、3代目だそうだ。

それにしても、この「はるにれの木」、初代「気になる木の割にはちっとも気にならないのであり、近寄るのも面倒なくらい遠いところにある。遠目で少しでも気になる木であればいいのだが、みた感じ本当にどうでも良さそうな木なのだ。だが、せっかくここまで来たのだし、行ってみれば何か収穫があるかもしれないので、だだっ広い平原(しかも、雨で湿っている)のど真ん中に立っている「はるにれの木」に向かって歩いていった。

結論。何もなし。

どうも俺は「何かありそう」に弱い。
近くに申し訳程度の小屋が建っており、そこには訪問者の一言ノート(カラオケとかによく置いてありそうな奴)があった。中をのぞくと、やはり後悔の念がつらつらと書き連ねられており、全部読むと呪われそうなくらい辛かった。結局、やっぱりダメだった感が増幅されただけであった。

釧路に行く途中で、もう一箇所立ち寄った。海である。北海道の南端を走っていたため、海が見えたのだ。そこで、ちょっと浜辺に寄り道。特に見るべきところはなかったが、俺は波に襲われてひどい目にあった。やけにムラのある波だった。何故か、俺の日記には「太平洋の海の藻屑となる」と書かれているが、俺の字ではない。

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