第1章 日本脱出(初日・前編)

この話は、韓国旅行記の第一章を先に読んでおくとより楽しめます。

1.どうでもいい話

学校サボってヨーロッパ。出発は12月15日。授業はなんと18日まで。旅行前日は早朝四時就寝。あばい(かなめ語)とおもってたら、いながきも早朝4時就寝。そして起床は7時前。睡眠時間3時間で海外旅行。いいのか?

俺はHP更新で忙しかったのだが、いながきはちゃんと世界史の勉強をしていたらしい。日本史受験のハンデを克服すべく、親が山川出版勤務といういながきは用語集と教科書を旅行に持ってくる。

なにしろ、

「エリザベス宮殿ってどこ?(そんなもの存在しない)」

「ローマってフランスだろ?(イタリアです)」

「ギリシアってどこの国にあるんだっけ?(ギリシアは国です)」

といった数々の問題発言を残した過去があるだけに、事前学習は必要不可欠といえる。強化されたいながきは、「ヒッタイト族が鉄器を発明した」などあまり今回の旅にはいらなそうな知識を獲得して得意そうである。

 

 

2.出発〜今回はやくざはいない〜

成田空港までは、前回のヤクザ(韓国旅行記第一章参照)の送迎はなかった。かなめによれば、ヤクザのおじさんは「後ろのやつ(俺)寝てただろう」などと最後に言い残したらしい。どうやら俺は殺される寸前だったようだ。あぶないあぶない。

今度寝たら殺されかねないが、幸い今回は超ローカル鉄道成田線を用いる。途中成田駅で成田空港行きの電車を待つ。そこで、年賀状の話になる。かなめは年賀状の枚数が少ないことで世界的に有名だが、それはかなめの友達が少ないというよりは恐らく、あまりにも手を抜いた年賀状のせいだと思う。あれは絵じゃない。その上コメントも無いので、年賀はがきにかかれていなければそれが年賀状とは気づかないかもしれない。かなめはあの絵を「デフォルメ」だというが、「デフォルメ」というよりは「デタラメ」である(いながき談)。

そんな偉そうなことをいっているいながきが、成田駅の壁に貼ってあったポスターの銀河鉄道999のメーテルを指差して口走ったのは、「魔女の宅急便だっけ?」である。こいつもデタラメだ。

 

3.成田空港〜歴史は繰り返す〜 

そんなわけで、成田空港。成田空港は前回使ったのでもう迷わない。チェックを済ませると、入り口の東京三菱銀行でトラベラーズチェックを作る事にする。トラベラーズチェックというのは旅行者小切手のことで、現金と違って本人以外には使えず、盗まれてもすぐに再発行できるというセキュリティ面でのメリットのほかに、両替のレートが現金に比べて有利という経済的な利点もある。まさか空港で作れるとは思ってなかったのだが、せっかくだから5万円作っておいた。

さて、いよいよ出国だ。出国カードを書く。そう。前回、韓国旅行でかなめがどうしようもないくらいまたがった(かなめ語)あの出国カードである。

 

かなめ(黙々とカードを書きつづける)

るしふぇる「今回は間違わないだろうなぁ。いいネタになるのに」

かなめ(一瞬、やばそうな顔をしてカードを左手に隠し、新しい出国カードを手に取る)

るしふぇる「おい、今なんか隠しただろ!」

かなめ「かくしてないよぉ」

かなめの出国カードを見る。姓:KANAME SHIMAKAGE 名:K

あ。苗字長ぇ。

恐るべし。また間違ってる。なんてすごいやつだ。

 

そして出国。しかし、ここでまさか運命の再開があろうとは、だれも予想しなかった……

前回の韓国旅行で出遭ったあの出国審査のお姉さん。

相変わらずきれいな人だが、どうしようもないくらいアンドロイド。無表情が怖すぎる。

「どうにかしてあのお姉さんを笑わせられないだろうか」

「パスポートを投げつけたら怒るだろうか」

「PHS投げつけられるかもしれない」

様々なことをいいつつ、結局何もできない小市民。

そしてゲートへ。ついにヨーロッパへの旅立ちである。

 

4.ヴァージンアトランティック〜ゲーム三昧〜

飛行機はヴァージンアトランティック。まずはロンドンまで直で飛んで、フランス行きに乗り換える。

間抜けである。俺らはパリ&ロンドンの旅なのだ。パリで4泊後、こんどはロンドンに戻ってくる。

そう。俺らの日程は、日本→ロンドン→パリ→ロンドン→日本 なのだ。一気にパリに行かせるか、先にロンドンに滞在させてくれればいいのに。

まぁしかたない。

※などと書いていたら、この不気味な日程の理由について投稿を頂いた。

13時間に及ぶフライトは、退屈させないようにいろいろなものがついている。目の前のテレビを使ってテレビゲームができるのだが、テレビゲームといってもたいしたものはついていない。スーパーファミコンのごくごく初期のものや、なにやらファミコンでも表現できるようなちゃちいゲームばかりである。ここに覚えているだけのラインナップを書いてみる。

1.スーパーマリオワールド:スーファミと同時に発売された名作。スーファミの基本がここにある。

2.F-ZERO:これもスーファミと同時発売。名作中の名作レースゲームである。10年近く前の作品だが。

3.パンチアウト:ボクシングゲーム。むかしファミコンで「マイクタイソンパンチアウト」というゲームがあったが、それの続編であると思われる。マイクタイソンはタイトルとともに消え去ったようだ。

4.HAGANE:これはしらなかった。後にかなめがロンドンのホテルで「その針金とって」を「その鋼とって」と言って場を騒然とさせることは誰も予想できなかった。

5.ラスベガス:よくわからないが、カジノのゲームらしい。英語表記なのでめんどくさい。

6.ホールインワンゴルフ:まんまの名前のゴルフゲーム。しょぼくてちっともやるきがしねぇ。

7.チクタクなんとか:なんと、「○×ゲーム!!」 あの、「井」と書いて○と×を交互に打っていき、一列並んだら勝ちと言う、えらく単純なゲームがスーパーファミコンで。任天堂製というのもアレだが、なによりも1996年制作と書いてあるのが泣かせる。

8.ワリオの森:なんかよくわからんのだが、マリオのパチもんが出てくるテトリスみたいなゲーム。

9.インベーション:早い話がインベーダーゲーム

10.ハングドマン:「吊るされた男」という縁起でもない名前のこのゲームは、名前からは想像もできない「国名あてゲーム」。アルファベットを少しずつ入れていって、問題の国名を当てるという口で言っても多分意味が分からないゲーム。これは、現時点飛行機内でゲームをやっている人のハイスコアと座席番号が画面に表示される。

※などと書いていたら、この不気味なゲームについて投稿を頂いた。

 

こういったゲームのほかに、英語でまくし立てる映画や音楽番組、ニュースや現在のフライト状況などが見られるが、これらの選択はすべて付属のコントローラーで行う。スーファミのコントローラを横に長くしたような形で、ついでにスチュワーデスを呼ぶボタンやライト、さらに裏には電話までついている。まるで十得ナイフである。機能満載だが使い勝手が悪いところまで十得ナイフだ。

とまあこういう状況で長い長いフライトが始まる。

とりあえず俺はコントローラーを適当にいじくっていたら金髪のフライトアテンダントに怒られた。

そして3人はおもむろにスーパーマリオワールドを始める。クリアまでのタイムアタック。時間は充分にある。

しかし!

コントローラーの性能が段違い。一番まともないながき、かなりおかしいかなめ、どうにもならない俺。

1時間ほどして、いながきがリタイア。

それから30分後、俺はコントローラーを投げ出す。このコントローラーはあばい。

そしてかなめがその30分後くらいにラスボスまで辿り着く。しかし、クリアできずリタイア。

しかしよくかんがえたら、俺は「スーパーマリオを5分30秒でクリアする男」である。

止めておいたコントローラーを再び手に取り、プレイ再開。

しかしこのコントローラーはかなりやばい。

1.勝手にポーズが掛かる(平均20秒に一回くらいかな?)

2.勝手にマリオが右に歩きつづけ、何を押しても反応しない。

3.勝手に何の前触れもなくジャンプする。

4.勝手にコントローラーがフリーズし、ひどい時には10分ほど全ての操作を受け付けなくなる(敵は容赦なく動く)

 

多分、5時間近く戦っていた。途中で何度か切れそうになったが、ここで諦めるわけにはいかない。

PHS投げそうになったが、あいにくPHSは家にある。こうして、コントローラーをしばらく(10分くらい)放っておくと一時的に(3分ほど)回復するということがわかり、なんとか大魔王クッパを倒すことができた。本当に長い戦いだった。

しかし。こんだけ苦労してクッパを倒したのにも関わらず、隣の二人は既に寝ている。なんて友達甲斐のないやつらだろう。

その上時間もまだ半分残っている。なんということだ。

仕方が無いので、ビートマニアを始める。ゲームボーイなのだが、前回の韓国に持っていったやつの続編だ。今回はBM98のように、一般的な曲がたくさん入っている。Automaticからガンダムまで、実に幅広い。ロビンソンが簡単らしく、いながきは旅の終わりまで延々とロビンソンばかりやっていた。

しかしこれも1時間と掛からずにほぼクリアしてしまう。

ここからが地獄だ。ほんとうにやることがない。あと5時間くらい本当に暇。暇。暇。

ふと、HANGED MAN というゲームが目に入る。

そう。上に書いた国名あてゲームだ。これは、隠された国の名前を当てる単純なゲーム。

最初、例えば_____(5文字分)と表示されている。まずはとにかく適当にアルファベットを入力する。

Aを入れたとする。運がいいと、_A_A_とか表示される。運が悪いと何も変わらない。

で、どうやら全部で5文字で2つめと4つめにAが入る国なんだ、と分かるわけだ。

まぁいろいろ候補はあるが、あとは適当に推理。規定の時間内にミスを少なくすれば高得点。ちなみに上の答えはJAPANとかになる。

このゲームを最後までやりつづけるのだが、これが結構難しい。一回でまぁうまくいって120点。ノーミスでいって、900点だが、ノーミスはかなり難しい。ついに一回しかできなかった。

2000点くらい行ったところで、見知らぬ西洋人(恐らくイギリス人)が声をかけてくる。

「俺50点!(英語)」

誇らしげに語る。しかし何のことだかさっぱり分からない。

するとイギリス人は画面の左下を指差す。このゲームは、飛行機内で同じゲームをやっている人の中で最も高い点数を表示し、かつ席番号まで出してくれる。どうやら、このおっちゃんがトップのようだ。

「50000点……」

そう。50ではなく、50,000点だったのだ。サウザンドが聞こえなかったのか、省略されたのかはよく分からない。

その後全部で3時間ぐらいやって4000点いかなかったくらいというのを考えると、イギリス人のおっちゃんは延々とこのゲームをやりつづけていたようだ。恐るべし……暇人! って、人のことは言えないが。

「すげぇよアンタ……(英語)」

嬉しそうに帰っていくイギリス人。

かくして、我々はロンドン・ヒースロー空港に到着した。

ちなみに機内食は、昼がシーフードカレー、夜はビーフンだった。

なお、恐らく大学生と思われる女二人組が前の席に座っていて、
かなめにスーファミの動かし方を聞いていた。

何でこんなことをわざわざ書くのか不思議?
それは秘密。

第二章 花の都(第一章・後編)