第1章 日本脱出
1.どうでもいい話
前日は深夜4時までパソコンをいじり、朝は8時に起きて大学にゆく。眠い。こんなことで初の海外旅行は大丈夫なのだろうか。
なぜ海外旅行に行く日にわざわざ大学に行くのか。なんと今日は成績を貰う日なのである。うちの大学は生徒の自主性を重んじて、成績表を郵送ではなく学生が取りに行くことになっている。他に自主性を重んじさせるべき所がいくらでもあるだろうに、そういう訳の分からない所で生徒の自主性を尊重する。そんなことだから週刊誌に斜陽大学だとか書かれるのだ。
そんなわけで大学に行くと、なんと語学を二つも落としている。大丈夫なのだろうか。俺。
ブルーな気分に浸りながら、家路に戻って旅の準備をする。
2.出発〜ヤクザとの戦い〜
出発6時10分の飛行機だが、成田には4時10分につかなければならない。今日はかなめのおじさん(父ではなく伯父さん)に車で連れて行ってもらう。かなめの伯父さんはヤクザなので注意が必要である。怒りを買ったら二度とシャバに戻れなくなる。
本当は2時ごろに出発しても十分間に合うのだが、かなめの伯父さんが「1時半集合」と言ったためそのようになった。時間にうるさいヤクザらしい。時間にうるさいのなら、きっと時間前に到着しないと怒られるかもしれない。よって、遅刻常習犯の俺がめずらしく10分近く前に到着。いながきはまだ来ていない。ヤクザはもういた。
1時半。いながきはまだ来ない。冷や汗をかく。ヤクザを待たせるとは、なんて無礼な奴だ。だが、ヤクザに聞こえると気を悪くするので言わなかった。
1時33分頃、ようやくいながきが来る。しかし、遅れた割にはのんびり歩いている。ヤクザの顔の様子は見えなかったが、きっと怒りに満ちた表情であったに違いない。
ヤクザに連れられて、3人は成田へ。その間、俺はいながきと後部座席へ。助手席のかなめはヤクザと仲良く話している。会話を聞いていたが、あまりヤクザっぽくは無かった。黒い世界の話を聞きたかったのだが。俺はゲームボーイをしたり寝てたりした。もちろん、ヤクザの怒りを買わないようにイヤーホンをつけて。しゃべったらいけないような気がした。
そして、成田に到着。いよいよ、日本を離れる時が来た。ヤクザに別れを告げ、いざ空港へ!
3.成田空港〜脅威の初飛行機〜
成田へ着く。時間があるので、旅行会社から貰った出国カードを書く。自分の名前をローマ字で書き、生年月日や住所、渡航先などを書いていく。
「あっっっ!!!」………かなめが叫んだ。
彼の苗字は「島影」である。
そこには、「SHIMAGE」と書かれた出国カードがあった。
「しまげ?」
「何かの毛か?」
「あばい!」(日本語訳:やばい)
びっちり隙間無く書かれているので、AとGの間にKAを入れると言うような高度な技術は使えない。
「これ、公文書じゃないのか?」
「じゃあ公文書偽造だな」
「取り戻しがつかないことやっちゃったよ」(日本語訳:取り返しがつかない)
動揺するかなめ。恐らく、別の用紙がどこかにあるだろう。辺りをうろつくが、みつからない。仕方なく、二重線を引いて書きなおす。
「あっっっっ!!」かなめが叫んだ。
そこには、生年月日の欄に「1954年」と書かれた出国カードがあった。
「あばい!」(日本語訳:やばい)
「かなめ、45歳かよ?」
「なんで昭和で書くんだよ」
「またがっちゃったんだよ!」(日本語訳:まちがっちゃったんだよ)
動揺していたらしく、もはや手のつけようがない。仕方なく、再び二重線で消すと、えらく汚い出国カードができあがった。
果たして無事に日本から出られるのか?
と思ったら、出国審査のところにちゃんと用紙があって、書きなおすことができた。
出国審査のお姉さんはきれいな人だったが、これ以上無いくらいに無表情で怖かった。精巧なアンドロイドかもしれない。
というわけで、飛行機に乗る。だが、なかなか出ない。おかしい。6時10分はとっくに過ぎている。だが初飛行機なので、飛ぶまでは寝るわけにはいかない。むう。
結局、飛行機が飛んだのは1時間後。6時10分までの待ち時間をあわせて、1時間半も飛行機の中でぼおーっとしていたのである。その間いながきのビートマニアが少しだけ上達した。
飛行機が飛び立つと、放送が入る。「到着は20時45分です」。予定時間と変わらない。すると、ユナイテッドはこの1時間の遅れを見越して予定を立てていたのか??びっくりである。
そんなこんなで、機内食。「今回の旅最大の目的は機内食である」という話も出たくらい、我々は機内食に期待していた。しかし、出たのはローストビーフサンド(冷え切っている)とクッキー、妙に塩辛いナッツ類、そしてどう見てもゼリーとしか思えないカップに入ったオレンジジュース。どうやらアメリカ食のようだ。
味、量ともに大変不満であった。さらに、サービスのコーラは変に甘い。どうもアメリカの食べ物は大味だ。まぁ、今回はフライトが短いので、この程度なのかも知れぬ。次回の長旅には期待してやろう。
最終的にソウルに着いたのは21時30分頃である。やっぱり遅れを見越していたわけではなかったらしい。なんなのだ。ユナイテッド航空は、遅れた事などまったく触れず、何事も無かった様に着陸。何か言えよ、おい。またアメリカ人への不信感が高まる。
なお、最後にイヤホンを回収していたが、俺のところには来なかったのでかばんに入れて持って帰ることにした。ゲームボーイに使える。
そして、ついにソウルの地へ。