第7章 アンコール遺跡群 後編(6日目)
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今日は午前中はアンコール・ワットでのサンライズとバンテイアイ・スレイ遺跡観光、午後はアンコール大回りコース。
1.アンコール大回りコース
午後はカニヤさんの友達のロッターさんという女性ガイドに交代。
そりゃ、日の出を含めた一日中のガイドはきついよな。。
後で聞いた話だと、サンライズのツアーを担当するのは一日置きなのだそうだ。
というわけで午後は「アンコール大回りコース」と呼ばれる遺跡巡りに向かう。
プリアカン、東メボン、プレ・ループ、タ・プロームの4つの遺跡を回るコースだ。
特にタ・プロームはかなり期待している。
映画「トゥーム・レイダー」の撮影に使われ、一説では「天空の城ラピュタ」のモデルとも言われている遺跡だ。
ところでSHOHEはタイにいる辺りから「デジカメの充電池がもう無くなる!」とぼやきながらも思う存分写真を撮りまくっていたが、
何だかんだでしぶとく残っているようだ。タ・プロームまでだって持ちそうな勢いだ。
(1)プリア・カン
午後一つめの遺跡はプリア・カン。
クメールがチャンパー(今で言うベトナム)との戦勝記念に作った仏教寺院だ。
隣国と言うこともあり、ベトナムとカンボジアには、古くからこういういがみ合いの歴史がある。
それは戦後のカンボジア史にも言えることだ。この国の混乱はベトナムがらみばっかりだ。
アンコール王朝以来、カンボジアはたびたびベトナムの侵略にあっている。
フランス植民地時代、直接カンボジアを支配していたのはフランスの手先となったベトナム人だった。
ベトナム戦争時代、ベトナムのとばっちりを受けてカンボジアはアメリカに空爆された。
国民の6人に1人が虐殺されたという恐怖の圧政から救ってやる、というような顔をしてポル・ポトを追い出したのは侵略者としてのベトナムだった。
大雑把に言えば、このベトナムの支配を打ち破って蘇ったのが今のカンボジア王国になる。
こういう背景もあり、カンボジアのベトナム嫌いは有名なんだそうだ。
このプリア・カン、仏教寺院ではあるが、仏陀だけでなくヒンドゥーのヴィシュヌやシヴァ、さらには祖先を祀った門が建っている。
異教徒でも入りやすいようにとの配慮なのだそうだ。当時はヒンドゥー教の影響力がまだ強く、おざなりにできないという背景もあったようで、ガルーダなどの彫刻も彫られている
全般的に修復があまり進んでいないようで、あちこちに大きな石がゴロゴロしている。
遺跡自体は結構広くて、多分知らないでうろうろすると迷子になると思う。
ここには聖なる剣が納められたという2階建ての建物があり、王はその周りに踊り子を配してダンスを楽しんだという。
また、ここには樹木に押しつぶされた建物が一つある。後に出てくるタ・プロームの前哨戦みたいな感じだ。
(2)ニャック・ポアン
次の目的地は東メボンなのだが、オプションでニャック・ポアンという遺跡を案内してもらう。
今回は一つしか入らなくて10ドル。ちと微妙。
ここは寺院ではなく、当時の病院に当たるらしい。と言っても、「聖なる水を浴びることで病が治る」といった程度の医療技術だが。。
このニャック・ポアンは「からみつく蛇」を意味する。その名の通り正面の塔にはナーガがからみついている。
そういうと、WHO(世界保健機関)のシンボルも蛇のからみついた「カドゥケウスの杖」だ。
ギリシア神話に登場する医神アスクレピオス(=蛇遣い座)が持っていた治癒の杖に由来するのだが、カンボジアの病院の遺跡と西洋の医学のシンボルが同じ「絡みつく蛇」を表しているのは面白い。
蛇の脱皮から再生をイメージするのは世界共通なのかも知れない。
■左側に浮かんでるように見えるのがヴァラーハ
中央の大きな池には塔が建っており、側には海で難破した男を助けたというヴァラーハという馬の像が立っている。
ヴァラーハというのはヴィシュヌの化身のイノシシの名前だったと思うが、同じものなのかは不明だ。伝説では、このヴァラーハは観音菩薩の化身らしい。
雨季だから馬が海を渡るシーンがいい感じに見えるが、乾季だと水がなくなってるらしい。
それはそれで、中央塔に近づけるようだが。。
![]() ↑人 |
![]() |
![]() 馬 |
↓象![]() |
この遺跡は結構面白くて、中央の池の周りには四つの小さな池がある。
それぞれの中央の池側の壁面にある祠に「医療施設」があり、そこには4つの動物(人間、馬、獅子、象)の顔をした取水口がついているのだ。
占い師によって(!)診断された人々は中央の池から出た水が祠のシヴァ・リンガを通り、動物の口から出る水を浴びることで病を治していたそうだ。
ちなみに、病状によって四つのどの祠に入るかが変わるらしい。
何かこれを見ているとローマの「真実の口」を思い出す。とりあえず手を突っ込んで写真を撮ってる人がいた。
(3)東メボン
10ドルの寄り道は終了し、次の目的地は東メボン。
たどり着くと、水牛を飼うおじさんがいた。立派な角だ。
これを見ると、古代権力の象徴が牛だったという話も頷ける。ホルシュタインだけ見ていても実感はわかないのだ。。
この東メボンは東バライと呼ばれる溜め池に位置しているが、現在は池に水は残っていない。
先ほどのロリュオス遺跡群のバコンと同様、元々は船でないとたどり着けなかった。
かつては水を湛えていた巨大貯水池を守るための寺院である。
余談だが、バライとは溜め池を表し、アンコール・トムを挟んで東バライの反対側には西バライがある。
中にはやはり西メボンという遺跡があるらしい。
通常、観光客は西バライまでは行かないのだが、西の方はちゃんと巨大な溜め池が水を湛えている。どれぐらい巨大かというと…何とアンコール・トムよりでかいのだ。
南北2km、東西なんと8km。
最初は西バライに行きたいとも思っていたのだが、かなりマイナーらしいし遠いので諦めた。
それにしてもこんなでかい溜め池を11世紀に作っていたとは…アンコール王朝、恐るべしだ。
話を東メボンに戻そう。
池の中にあったこともあり、全体が階段状になっているこの遺跡の二階部分には立派だけど鼻が欠けた象の像がある。ゾウのゾウだ。
TRICKか何かでこんな話があったな。。
(4)プレ・ループ
次の目的地は、プレ・ループ。
多分午後の遺跡で一番でかい。
当時の火葬場らしく、火葬の為の棺桶や灰を流す設備もあった。
高さがあるだけあり、頂上から見る景色は絶景だった。
日本では見かけない光景だ。
だんだん暗くなり、ついにSHOHEの電池が底をついたところで、本日のハイ・ライトであるタ・プロームへ向かう。
(5)タ・プローム
ここは遺跡発見時の状態を残す趣旨で、必要最低限の修復のみで保存されている。
入り口から破壊された寺院のある場所まで、ジャングル地帯に開かれた一本の小道を通る。
時間が遅いことも手伝って我々以外に見学者はおらず、とても静かで神秘的だ。
巨木の立ち並ぶ中、鳥の鳴き声だけが不気味に響く。まさに樹海。
ガイドさん自身がちょっと怖がっていたのが不安を倍増させる。。
この遺跡はまさに「樹木が寺院を食い尽くす」という言葉がぴったりだ。
自然の猛威の凄まじさを否応なく感じさせられる。ガジュマルの木に「食われた建物」がこのタ・プロームには無数に存在する。
人間の作ったちっぽけな石の建物など、悠久の時の流れと自然の力に比べればいかに無力かということをまざまざと実感させられる。
■樹木が寺院を押しつぶす。。遺跡の発見当初はこんな感じらしい。
■比較する物がないのが残念だが、上の木はものすごくでかい。
■バルスと唱えた後のラピュタ
■コンロにはナショナルと書いてある
鍋の味付けは和風なんだが、入っている野菜などの具、付けだれが微妙にカンボジア風だ。
とても美味しかった。
実は我々の一行は到着が遅かったので、アプサラ・ダンスを待たせていたらしい。
ロッターさんがガイドの親玉に怒られていた。まぁ確かに遅れた要素はいくらでも思いつくが。。
最初はタイの舞踊が続き、3つめぐらいにアプサラダンス。
アプサラ・ダンスはこの国の伝統舞踊。アンコールでもあちこちで見かけたアプサラス(水の精。天女?)に見立てたダンスのようだ。
指先でリングを作るような手先の動きがポイントなんだそうだ。衣装も何だかアジアンお姫様。
かつてポル・ポト時代、アプサラダンスの踊り手は王に仕える者として虐殺されたらしい。
身分を隠してひっそりとアプサラダンスを伝えてきた踊り手達によって少しずつ蘇ってきたという重い歴史があるのだ。
SHOHEはダンスそのものではなく、2つめぐらいの謎のダンスの後ろで踊っていたヒゲダンスみたいな兄ちゃんと、小さな少年がやる気のない顔で弾く木琴のテクニックにえらく感動していた。
食後はホテルに送られるのだが、我々は、ツアーが一緒になった2人と、仕事が終わったロッターさんを誘って飲みに行くことになった。
最初、危うくコンビニ(ミニストップみたいな感じ)に連れて行かれそうになったので、さすがにそれは落ち着かないのでちゃんとしたお店へ行った。
バスの運転手に待ってもらいつつ、ビールなどを飲む。さすがに鍋一つ分食ったので食い物は口に入らず。。
メニューには食事メインな感じで、いわゆる「おつまみ」的なものはあまりなかった気がする。
ビールは何種類かあるのだが、「アンコールビール」にはANGKORビールとANCHORビールの2種類があって驚いた。
メニュー見ても気づかなかったが、ラベルをよく見ると綴りが違う。
ANCHORビールは後で調べると、シンガポール産らしい。
ANCHORってよく考えると「錨」のアンカーだが。。紛らわしい。
一方、ANGKORビールはアンコールとは全く関係ないロッターさんの故郷で作られたらしい。その割にANCHORの方を飲んでいたが。。
23時頃解散。結局、ガイドさんの分まで払って一人頭5$。さすがに安いな。。