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第8章 サンクトペテルブルグ ピョートル夏の宮殿

【1】 ピョートル宮殿


でかいレストランで朝飯を食って観光へ。

今日の目的地はピョートル夏の宮殿
ペテルブルグから車で一時間半ぐらいのペテルゴフ(ペトロドヴァレツ)という場所にある。

全食ついたツアーだからルーブルなんかほとんど使わないと思っていたのだが、これがまた何かと入り用で、今日もまたドルをルーブルに両替。
レートなり使える場所なりを考えると、最近はドルよりもユーロの方がいいかもしれない。
いずれにしてもルーブルを円に戻すことはできないので、両替はこまめにやるべきなのだが。

▲聖ペテロ・パウロ寺院 ▲ネコがたくさんいた

バスでペテルゴフに向かう途中、休憩場所として立ち寄ったのが聖ペテロ・パウロ寺院。(多分)。

ガイドもそう言ってたし、現地で買ったガイドブックに載ってる写真にもそう書いてあるんだが…細部の形が微妙に違うような。。
かなり大きくて立派な寺院だったが、ほとんど素通り。側にある湖もきれいで、猫の住み着く落ち着いた雰囲気の場所だった。
こういうところでゆっくりしたいもんだ。近くには市場もあって、もう少し時間欲しかったかな。


そんなこんなでペテルゴフへ到着。
1000ヘクタールを超える広大な敷地に、30もの建物が建ち並ぶ美しい庭園だ。
上下の公園に分かれ、多数の彫刻と噴水に彩られた「ピョートル大帝の宮殿」は、ピョートル大帝自ら設計したものだという。


▲右下のがサムソン。吹き出る水の高さは25m

天気も申し分なく、何とか噴水が見られる季節に訪れたこともあって今回の旅行中で一、二を争う絶景だった。
なかんずく噴水。黄金に輝く無数の彫像から、ものすごい量の水が噴き出している。
中心の像「ライオンの口を引き裂くサムソン」から吹き出る水の高さは25m。これは見事だ。
この噴水、丘の上から自然に流れてくる水を利用しており、経費もあまりかかっていないらしい。

というわけで、噴水の上に構える黄色い大宮殿(ピョートル夏の宮殿)へ入場。

この宮殿もそうだが、ロシアを旅していると入り口で上着を預けなければならない場所が多い。
ただし上着なら何でもというわけではなく、ジャンパータイプのものはまず預けさせられるが、ジャケットの形をしていればほとんどノーチェックで素通りできることが多い。

中はエカチェリーナ宮殿同様、息をのむような豪華な内装がこれでもかというほどに続く。
中には中国風の部屋もあり、ロシアがヨーロッパとアジアに囲まれた大国であることを再認識させられた。


▲豪華な内装

▼天井画も素晴らしい

▲食堂

▲寝室




▲肖像画

面白かったのは、玉座の間の中央、皇帝の玉座の背後にかけられた、肖像画。
この白馬に乗ったりりしい軍人、男だと思いこんでいたが実は女帝エカチェリーナII世。さすが男勝りで名を馳せた女帝だ。



そのまま、庭園近くに面しているフィンランド湾を見に行く。広大なペテルゴフの端の方は、海に面しているのだ。



地図を見ると分かるのだが、ペテルブルグはロシアの西端に位置していて、湾を越えると北欧フィンランドというロケーションなのだ。
内陸だと思いこんでいたので、俺的には意外だった。というか地図ぐらい見ていけという感じだが。

他にペテルゴフの見所といえば「いたずらの噴水」だろうか。
2m四方ぐらいの石畳の空間を、子供たちが大騒ぎで走り回っている。
一辺にはベンチがあり、ベンチの中央に金色の顔(人間?悪魔?)がついている。


▲いたずらの噴水

見ていると、何かの弾みで地面から突然水が噴き出す

たまに、壁の顔の口から強烈な噴水が出てくる

子供たちは水が出てくるタイミングをさけながら、石畳の上を駆け回る。

しばらく見ていたが、どういう仕組みで水が飛び出すのかさっぱり分からなかった。
ロマノフ王朝の時代からあるようなので、センサーで反応しているわけではないと思うのだが。。。。

これ、実はベンチの裏にいるおっさんが操作しているらしい。
手品なんて種を知ってしまえば大したこと無いが、分からないうちはどんなに安易な種でも不思議なもんだ。


その後、緑の綺麗な庭園を回る。
明らかに水出過ぎな通称「ローマの噴水」や、丘の上のドラゴン像が印象的なチェスの山を通って敷地の外に抜ける。
やっぱりここはもう少し時間が欲しいなぁ。

▲ローマの噴水 ▲見えにくいけど真ん中のがチェスの山。頂上に作り物っぽいドラゴンがいる。




昼食は、ペテルゴフのレストラン。
壁にはプーチンゴルビーといったVIPが訪れた記念写真が飾ってある。

全般的に美味しかった。



・サラダ(甘酢。味がちゃんと付いている。キャベツと人参か?)
・野菜のスープ(普通に美味しかった)
・串焼き(豚…かな?コーサカス風で、ケバブみたいなもの。ジャガイモが添えてある)
・アップルケーキ

【2】 ネフスキー広場と血の上の教会

食後はサンクトペテルブルグの市内観光へ向かう。

最初に訪れたのは、イサク広場
世界第三位の規模を誇ると言われる聖イサク寺院がそびえる広場だ。


▲聖イサク聖堂

キューポラ(丸屋根)をいただく聖堂としてヴァチカンのサン・ピエトロ大聖堂、ロンドンのセント・ポール大聖堂、フィレンツェのサンタ・マリア・デル・フィオーレ聖堂に次ぐらしい。

って世界四位じゃん。

19世紀に40年以上かけて作られたこの寺院のキューポラには100kgを超える金が使われているが、当時は毒性があまり認識されていなかった水銀を使って金メッキされていたらしい。
そのせいで相当数の職人が倒れていったらしいが…アスベストみたいだな。


▲青銅の騎士像

広場の中心には皇帝ニコライ一世の銅像、通称青銅の騎士像が建ち、イサク寺院を見つめている。
その隣にはちゃっかりマトリョーシカ屋が並んでいて、観光客を見つめている。

ちなみにイサク広場のそばにかかる橋の幅(長さではない)は99.95mだそうだ。
その5cmのこだわりは何なのか。

次に我々は、ワシリエフスキー島ネヴァ川ほとりのロストラの灯台柱へ。
ここからはネヴァ川を挟んで、昨日行ったエルミタージュ美術館が一望できるスポット。結婚式のメッカになっているらしく、ウェディングカップルが何組か式を挙げていた。



大砲を鳴らしたりと、本格的だ。

遠目には、ペテルブルグでテレビ塔の次に高いという尖塔が印象的なペテロハバロフスク大聖堂が見える。


と…

なんか鎖につながれている動物を発見。
犬…じゃないぞあれは。


近づいてみると、何と…


だ。


鎖につながれた小熊が台の上でうろうろしている。



さすがに口にくつわをはめさせられていたが、哺乳びんに入ったミルクなんかを器用に抱えて飲んでいる。こうしてみるとかわいいな。

せっかくなので近寄って触ってみた。ゴワゴワしてた。


その後、通称「血の上の教会」と呼ばれるキリスト復活聖堂(スパス・ナ・クラヴィ)の近くへ。ここはモスクワのワシリー寺院と似ていて、実際ワシリー寺院をモチーフに作られたらしい。


▲血の上の教会。赤の広場のワシリー寺院に似ている。

血の上の教会の由来は、皇帝アレクサンドル2世が爆弾テロに遭い、致命傷を受けた場所に建築されたことによる。こういう重大事件があった場所に教会を建てるのは、ロシアの伝統なんだそうだ。

ここも結婚式がいくつか執り行われていた。ビックリするぐらい綺麗な花嫁さんもいた。往々にしてロシア人は美人が多いが、時々息をのむぐらい綺麗な人がいる。


▲あちこちで結婚式が

後、結婚式と関係があるのかないのか、この辺は馬に乗っている人が多い。
なぜだろう。


バスはローマの軍神マルス像の立つマルス広場の前を通り、ペテルブルグの中心ネフスキー大通りへ。
実はこの後ロシアの民族舞踊のオプショナルツアーがあったのだが、不参加を決め込んでいた我々はここから自由行動になった。ちなみにオプションに参加していないのは我々ともう一組だけで、後の十数組は全員参加。

ガイドにホテルへの帰り方を確認し、ツアーと別れる。

「147番のバスに乗り、15P払ってホテルの前へ。乗り合いのワゴンも来るけど、バスに乗ってください」

というわけでネフスキー大通りに繰り出す。
何げに観光最終日にして初の自由行動だ。なんだこの開放感。


▲ネフスキー大通り。ちょっと暗くなってからの写真。

ネフスキー大通りはペテルブルグの中心を走るまっすぐな道で、広い道の脇に高い建物が建ち並ぶ。パリとかに雰囲気は近いだろうか。完全に近代化していて、ヨーロッパの町並みだ。ただしスリは多いので注意しなければならない。これだけはホントにガイドに念を押された。

まずはさっき言っていたバス停の位置を確認する。
確かにあるが…147番のバスが来るかどうかはよく分からない。
ん〜〜〜帰れ…そうかな。

とりあえず街をうろついてみることにしよう。

飲食店や衣料品店などが立ち並ぶショッピングモールのような場所に入り込む。
いろんな店が並んでいるが……

熊の剥製発見。

普通にインテリアとして売っているとはさすがロシア。
価格は日本円にして……18万円

んー。ありかも。

でかくてドアを通らないが。

あちこち回ってるうちに、なぜかCD屋とつながっている食器屋に入り込む。

ん?待てよ。。。

ここに缶切りがあるんじゃないのかっ?

ナイフ類の並ぶショーウィンドウに釘付けの俺。そして…やっぱり発見!

45Pと文句のないお値段。即買いを決め込む。

ところで多分この店がロシアでは一般的なんだと思うが、買い物の仕組みがちょっと変わっている。

商品をカウンターに渡すと、商品に張られているシールをはがされる。
→そのシールを持って別の場所にあるレジに持って行き、お金を払うとレシートがもらえる。
→レシートを再度カウンターに持って行くと商品と交換できる

といった仕組みだ。盗難防止だろうか。理由はよく分からない。

ともあれついにイクラの瓶を破壊できるアイテムを手に入れて絶好調の我々は、やたらと物価の高いデパートに寄った後、ネフスキー通りの地下道でCD屋を見つける。

……お。これは…

t.A.T.uのアルバムだ。手書きだがNewと書いてあるので、新曲のようだ。
しばらく見なかったと思ったら休眠していたようだが、確かに最近復活したというのは日本でも聞いている。
140Pだったのでとりあえず購入。
後で気づいたんだが、この一週間後ぐらいに日本で発売されたアルバムだったので何げに先行輸入だ。

一通りぐるぐるとネフスキー大通りを回った後、折角なのでさっきの血の上の教会に近づいてみることにした。モスクワでもワシリー寺院に入れなかったし、いかにもロシアなこの建物を間近で見てみよう。

ネフスキー大通りをはずれて血の上の教会へ近づくと、だんだん観光地っぽくなっていく。
馬に乗った人が出現し、マトリョーシカの屋台が増えてくる。

結局マトリョーシカを買う気になったたけし、露天で店員と交渉。
俺はマトリョーシカはもう買ったので他の商品を眺めていると……

るしふぇる「おい!たけし見てみろこれ
たけし「……おおっ!?


明らかに目が輝くたけし。
見つけたのは…ペテルブルクの路線図がプリントされたTシャツ。

一般人には幾何学模様だが、鉄道マニアには芸術家のデザインをもしのぐ魅力なんだろう。
次の瞬間にはもう、店員と交渉に入っていた。さすがだなぁ。。今までそんなやる気一度も見せなかったのに。


▲血の上の教会(裏)

血の上の教会に着いたが、さっき訪れた真裏のようで、正面入口に回ってみることにした。
ダメもとだったが、19時までOPENとあり、まだ中に入れるらしい。
窓口でチケットを買おうとしたら「外人は中で買え」とのこと。うーむ。外国人価格になりそうだな。大丈夫だろうか。

折角なので覚悟を決めて建物の中に入るとすぐにチケット売り場。ただ外と値段は一緒のようだ。とはいえ270Pは十分高い。金閣寺より高い。

ロシアの教会はデカイが、中が何部屋にも分かれていたり階層がいくつもある感じではないので、1つのフロアが広く、天井が高い。そこに黄金に輝くイコンが壁や柱を埋め尽くすように描かれている。ここの絵はモザイク画で、心なしか漫画チックなタッチで描かれた宗教画が圧巻。教会自体が比較的新しいので、絵柄もよりわかりやすいデザインなのだろう。

【3】 謎のホテルプリバルティスカヤ

その後、血の池の教会からネフスキー大通りに向かう途中にあったカフェテリア形式のレストランで夕食にすることにした。

夕食
・ミートボール入りボルシチ
・イスラエル風サラダ
・ドイツ風ヒレステーキ
・ピロシキ
・ケーキ




サラダ以外はなかなか美味しかったが、ちょっと食い過ぎた。
後で気づいたんだが黒パンはセルフサービスで好きなだけ持って行って良いらしい。さすが黒パンの国だ。日本で言うと「ご飯お変わり自由」みたいなもんだろうか。

食後、ネフスキーをふらついた後ホテルに向かう。
ガイドに聞いたバス停に着くと…超ベストタイミングで我々が乗るべきバスが登場。
入り口で集金係の姉ちゃんに15P支払い、降りるべき停留所に着くのをを待つ。

……ただ、これがちょっと厄介だ。
何しろ我々は降りる停留所の名前を知らされていない。

「ホテルの前にバスが止まる」という情報だけが与えられているのみだ。

頼りになるのは地球の歩き方に載っている地図と、バスの中にある分かりにくくて大ざっぱな地図だけだ。
ネフスキー大通りがどこにあるのかと、我々のホテルが結構街のはずれの方にあるということだけ。

あとはこのバスがホテルに近づいていることを信じるしかない。

不幸中の幸いは、停留所間の距離が意外と短いと言うことだ。つまり、バスから外を見ていれば、一つぐらい乗り過ごしたとしても頑張って歩けないこともない。

ふと、途中でバスの窓に張り紙が貼ってあることに気づく。キリル文字で書かれていて字の大きさがまばらだが、どうやら何かのリストのようだ。

……ん?見覚えのある単語に気づいた。

Эрмитаж

エルミタージュ…


なるほど。いつの間にかキリル文字がある程度読めるようになっている。これ、停留所じゃないか?もしかして。

てことは…リストを追っていくと……

Прибалтийская

プリバルティスカヤ… 

これだ!我々の泊まっているホテルの名前が確かプリバルティスカヤだったハズ。

どうもこのリストにはすべての停留所が載っているわけではないようだが、ネフスキー通りとエルミタージュ美術館の間隔からホテルまでの大体の距離感が分かるはずだ。というか、何よりこのバスが本当にホテルに向かっているということが判明したのは大きい。

バスは予定通りエルミタージュ美術館の前を通過。これで確信できた。
実は結構早く着くと思っていたのだが、ホテルからはかなり離れていることが判明。バスには30分ぐらい乗っていただろうか…ようやくプリバルティスカヤに到着。本当にホテルの目の前だ。

精神的にも結構疲れていたので、とりあえず部屋に戻りスーパーに買い物に行くことにした。

ロビーに向かうエレベーターに乗ると…



……インディアン?


ああ、ネイティブアメリカンだっけ。

そんな感じの格好をしたおばちゃんが二人乗っていた。

なんだろう。アパッチ族もロシアなんかに来る時代なのだろうか。
その割に中途半端に作り物っぽい民族衣装だが。


だが、その変なおばちゃん2人組はこれから起こる大事件の序章にすぎなかった。


エレベーターを降りてロビーフロアに着いた我々が見たものは……


群れ。


おばちゃんの群れ。


平均年齢40から50、インディアンだけでなくとにかくいろんな格好に仮装したおばちゃんたちの群れ。

このホテル、ペテルブルクでもデカさだけならダントツなのだが、その巨大ホテルの1フロアがおばちゃんたちで埋め尽くされているのだ。人口密度で言えば大晦日のアメ横に匹敵する。前に進めない。いったい何が起こっているのか?侵略か?侵略活動なのか?


後で聞いた話によると、何でも1500人ぐらいいたらしい。1500人って何だ!妖怪大戦争かお前ら!


死にものぐるいで両替をすませ、ホテルを出る。
とりあえず徒歩10分のスーパーで晩酌セットを買い、ビクビクしながらホテルに戻ると…



妖怪たちは何事もなかったかのように消えていた。

何かこう、後部座席に女の人を乗せたが気づいたらいなくなっていたタクシー運転手みたいな気分になった。

あれはきっと幻覚だったんだと無理矢理結論づけ、ホテルのBARに行ってみる。
Three Moonという名前のシーフードレストラン。ここは寿司も出すらしく、いくつか注文してみた。

寿司自体はまぁ…アレだったが、それより何より寿司を握る金髪ロシア人の着る板前上着の背中に黄金に輝く巨大な文字が衝撃だった。



金魚



金魚は食えねぇんだよロシアの兄貴!!



マグロ、ハマチ、エビ、サーモン巻、イクラ、玉子、スパイシーマグロなどを注文した。
スパイシーマグロは別に辛いわけではなくって、味付けみたいなニュアンスなんだろうな。
俺はイクラの固さに辟易したのだが、たけしはこれが好きらしい。まぁ好みは人それぞれか。

その後部屋に戻り、昼間手に入れた缶切りを使って念願のイクラ缶でウォッカ。
旨いよイクラ!!ちょっと小粒だが、さっきの寿司より断然旨い!!!

米の飯が恋しくなってきたなぁ。

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