第6章 ロッテワールド

 

1.本屋〜ぎ、ぎるがメッシュ!〜

3日目。とりあえず、俺の今回の旅行の野望のひとつ「韓国における日本旅行のガイドブックを見る」を果たすべく、ソウルで一番大きいという本屋へ。漫画とか探すんだったら一番大きくない本屋のほうがいいような気もしたが、せっかくだから行ってみることに。もちろんタクシーである。

中はやはりでかい。ただ、見る限りではワンフロアだけなので、意外と蔵書数はたいしたことないかもしれない。

さて、韓国で見つけた日本の本。まず、脳内革命。「脳」が旧字体になっていたが、外見からしてまったく一緒の本である。

続いて、日本でも相変わらず売れている「五体不満足」。ちゃんと韓国語訳されている。出たばっかりなのに、早い早い。

奥のほうには日本の本のコーナーが。日本からそのまま輸入してきた本で、新聞や雑誌みたいにタイムリーなものも置いてある。まぁ、片道2時間半だし。

目的のガイドブックは、韓国語表記なのでなかなか見つからなかったが、何とか発見。しかし、どうも日本中を網羅している分厚い本しかないようで、「ここが見どころ!」みたいのを期待してた俺としてはあまり満足の行くものではなかった。書いてある意味もぜんぜんわからんし。

そんなことよりも、我々が読んでショックを受けたのは、日本のテレビ番組をジャンル別に分類して解説している本であった(もちろん韓国語)。

なんと、あの「ギルガメッシュナイト」が紹介されているのだ。

しかも、わざわざコーナーひとつ割いて!!

「他に紹介する番組がいくらでもあったろうに……」

イジリー岡田の横顔に時代の流れを感じつつ、我々は本屋を後にした。

 

2.カレー〜梨〜

腹が減ってきたので、昼飯をどうするか、と考えていると、途中でカレー屋を発見した。カレー王としては、ちょっと見逃すことができない。

メニューを見ると、色々あるのだが、デラックスカレー、みたいな名前の奴がよさそうだ。7000ウォン。日本とそれほど変わらない。サンプルを見ると、上に巨大なエビフライ、カレーを覆わんばかりのとんかつ、なんだか分からないフライなど、豪華絢爛である。

店が混んでいたので、そとで注文し、席が空いたら中に入る。

いつも辛いものばかり食っている民族だ。きっと、カレーも度肝を抜かれるほど辛いに違いない。

だが、期待に胸を膨らませる俺の前に出てきたのは、日本でもまれに見るほどの貧弱なエビフライと、カレーに覆われてどこにあるのか分からないとんかつの入った、ちょっと色の薄いカレーだった。

「なんやねん!」

関西弁の叫びもむなしく、へいぜんとした顔で去っていくおばちゃん。

そして、食べるとあまり辛くない。俺が言うといまいち信憑性がないといわれるのだが、実際日本でも甘口の部類に入るカレーだった。ちょっとシナモンの味がするほかは、あまり日本のものと変わらないようだ。

まぁ、それでもボリュームはそれなりにあったので、ペテンにかけられた気もしつつ、それなりに満足して店を出るわれわれであった。

 

3.ロッテワールド〜世界最大の室内アミューズメントスポット〜

だそうだ。実際この日は雨だったので、室内アミューズメントパークは嬉しい誤算だ。外にもいくらかアトラクションはあったようなのだが、雨が激しいのでやめた。というか、乗り物が動いてない。

早い話が、ここは遊園地だ。駅から直接つながっており、地下から入る。そもそもロッテが韓国資本だということすら知らなかったのだが。中に入ると熊だか猫だかのマスコットが「アンニョンハセオ」と出迎える。

フリーパスが2000円くらいなので、えらい安く感じる。荷物をコインロッカーに運ぶと、中をうろうろする。

韓国の習慣なのか、やけにウェディングドレスが多い。そう言えば、前日に行った景福宮にも花嫁姿が多かった。観光地で結婚式をするのが流行りなのだろうか?

それはそうと、とりあえずジェットコースターに行ってみたいので、マップを確認。3階らしい。

フロアの端のほうでエレベーターが動いているのが見えたので、それに乗ることにする。ボタンを押してしばらくすると、扉が空いた。

中に入る。

3階を押す。

時間が止まる。

・・・・・・?

何も起こらんではないか。

結局、われわれはエレベーターを動かすことはできなかった。特殊な操作がいるのだろうか?

 

気を取り直して、1階から3階への道を探す途中、バイキングの船を見つけた。あの、振り子運動みたいなやつだ。それほど並ばずに乗れたのだが、これがめっちゃ恐かった。浮遊感、というのか、振り飛ばされそうな感じだ。

だんだん角度が上がっていくのだが、いながきは

「最初のほうは恐かったけど、角度がきつくなるにつれてだんだん恐くなくなってきた」

と物理法則を無視した発言をし、顰蹙を買う。

あとで調べたら、世界で一番急角度のバイキングの船だそうだ。75度らしい。

 

バイキングで十分恐い思いをしたので、今度は比較的恐くなさそうなものに乗ることにした。ボートみたいなものに乗って、室内につくったジャングルの川くだりをする。ぐるぐる回りながら壁に激突し、最後にジェットコースターのようにベルトコンベアで上まで運ばれて、その後急降下・・・・・すると思ったのだが、ゆっくり降りていく。何のために上まで運ばれたのか?

 

謎は謎でいいとして、ロッテワールドにも変な食べ物はあった。まずは、プルコギバーガー。昨日食べたプルコギが入っているのかと思いきや、どうも普通のハンバーガーにプルコギっぽい味付けがしてあるだけのようだ。日本で言う「照り焼きバーガー」的なものだと思う。

また、韓国の科学技術に驚嘆もした。題して「逆さにしても落ちないソフトクリーム」! なんと、コーンにソフトクリームを乗せた後、おもむろに逆さにして、チョコレート(解けてる奴)の中につっこむ。チョコレートはすぐに固まり、「逆さにしても落ちないソフトクリーム」の出来上がりだ。チョコレートには2種類あり、白いのもあったのだが何味なのかは不明。

 

さて、ここで面白いものを見つける。ゲーセンなのだが、なんと「ドラゴンボール」の格闘ゲームがあるのだ。日本で出たのかは知らないが、俺は見たことが無い。このゲームの凄いところは、悟空やピッコロはもちろんのこと、なんとミスター・サタンまで使えるのだ。安かったのでしばらくやっていたのだが、めちゃくちゃ難しい。最初の設定からこんなに難しいはずはないので、よっぽど難易度を高くしてあるのだろう。近くにあった初代ストIIは、ブランカの攻撃を3発食らうと死んでしまうという鬼のような難易度であった。どれも日本語だった。

 

そんなこんなでぶらぶらしていると、ついにジェットコースターを見つけた。結構並んだ。このジェットコースター、それなりに恐いのだが、それ以前に痛い。設計ミスなのか知らないが、あちこちに体がぶつかる。特に、頭。

乗り終わった後、顔中が打撲感に包まれ、「韓国の乗り物は作りが大雑把だなぁ」という感想を3人にもれなく植え付けた。

 

ロープウェーみたいなものにも乗った。ロープウェーというか、ロッテワールドの外壁の一番上を、機関車の形をした乗り物でゆっくり回る。ある意味、これが一番恐かった。

何が怖いかというと、これ、かなり高いところでいきなり停まるのだ。何度も。そして、韓国語で放送が入るのだが、何で停まったのかさっぱり分からない。事故なのかどうかすらわからない。別の意味で恐ろしい乗り物であった。

 

その後、変なアトラクションに入る。これは、1時間くらい待たされた気がする。苦労して待った挙句に連れて行かれたのが小さい映画館のようなところ。韓国語で解説が入って、前振りがあって、画面が切り替わる。トロッコに乗っている設定なのだが、これが凄い。まさにバーチャルリアリティ。自分はほとんど動いていないはずなのに、まさに自分がちょうどそこにいるかのような視点で、画面がめまぐるしく動く。そして、画面の変化に合わせた座席の衝撃。右へ左へとかかってくる重力。

後で聞くと日本にもこういうのはあるらしいが、とにかく驚いた。昨今の科学の進歩は目覚しい。

 

とまぁ、駆け足でロッテワールドの概要を語ったわけだが、所詮は室内、世界最大といっても限界がある。中にいたのは実際3、4時間だが、もう十分という気がした。

遊園地に飽きたわれわれは、近くのロッテ免税店へと足を運んだ。

 

南大門