第5章 明洞
1.明洞〜親切な関西人〜
気がつくと10時過ぎ。海外旅行まできて爆睡とはどういうこととだろう。ホテルの近くで飯を食おうということになったのだが、周囲1ブロック回っても店が開いてない。そりゃ、夜の十時だしなぁ。
仕方なく、ホテルに戻ってるるぶを読み、町に出ることにする。「海鮮鍋」が美味しそうだったので、そこの店を探す。結局、「ソウルの銀座」と呼ばれる(?)明洞で飯を食うことにした。
やっぱりタクシーで移動。どうも、この国にいるとタクシーに対する感覚が変わる。日本に戻った時が心配だ。
そんなこんなで、明洞に到着。ソウルの銀座にしちゃ、えらく静かな街だ。まあ、何度も言うように10時過ぎてるし。昨日の東大門が異常だっただけだろう。
そんなわけで、街をウロウロする3人。数歩歩くたびに日本語で呼びとめられる。なんで日本人だってわかるんだ。
メガネ屋からもお呼びがかかる。メガネって、海外でポンと買うようなもんじゃないだろう。
とその時は思ったのだが、あとで調べると韓国のメガネは以上に安いらしい。何千円単位。ちょっと寄ってみてもよかったかな、と少し後悔した。
しばらくあてもなく歩くと、マクドナルドがある。この時間まで営業しているとは、ありがたいことだ。「マクドナルドの7不思議」の作者である俺は、日本とのメニューの違いを確かめないわけにはいかなかった。
どうせハングルは読めないので、英語を頼りに注文する。……チキンバーガー?ありそうで、日本にはない食品だ。日本にあるのはチキンタツタだが、韓国に「竜田揚げ」などという概念があるはずがない。さっそく、購入。
味はというと、結構美味しい。一言で言えば、「チキンナゲットバーガー」である。マックナゲットの大きいやつをパンで挟んだ感じだ。マックの味は世界的にあまり変わらないらしい。
さて、あてもなく歩くと、やっぱり迷う。ここはどこだろう?フラフラしていると、道ゆく男女二人組の女の人が声をかけてきた。関西弁である。
「どこか行かれるですか?」
「ええ、まぁ……」
日本語で話しかけられるのは慣れているので、また何か売りつけようとしているのかと、曖昧に答えた。
「いや、その本もってるから……この人、ソウルに詳しいんですよ」
俺の持ってる「るるぶ韓国」を指差して、その人は言った。どうやら、日本人らしい。もう片方は地元の人のようだ。
「どこか、紹介しましょうか?」
「あ、じゃあここがどこなのかだけ教えていただけますか?」
完全に迷っている3人組。るるぶを見せると、女の人は親切に教えてくれた。
どうやら、着実に近付いてはいたらしい。女の人にお礼を言うと、我々は目的地である海鮮鍋屋に向かった。
2.海鮮鍋屋〜韓国最大の敵〜
海鮮鍋の店につく。やっぱり入り口にるるぶのカラーコピーが貼ってある。一種のステータスとかなのだろうか。
この店では、プルコギと海鮮鍋を注文する。
プルコギというのは、早い話が韓国風すき焼きである。すき焼きといっても、具は牛肉と玉葱。牛丼の具、といったほうが近いのかもしれないが、味付けはかなり甘口、そしてピリッと辛い。これは韓国肉料理の原則にもれず、サンチュで巻いて食べる。結構美味しい。
プルコギを食べていると、6人ぐらいの団体客が入って来た。何度も言うように10時を回っているので、店の中には最初我々だけだったのだが、その客が入ってきてだいぶ騒がしくなった。
基本的にこの国では(というか日本以外はそうなのだろうが)注文しないと水すら出てこないので、飲み物を注文。ウーロン茶、オレンジジュース、コーラをそれぞれ頼んだ。
出て来たのは、缶ウーロン茶(180ml)、オレンジジュース(コップに。ウーロン茶と同じくらい)、そして瓶のコーラ(350ml)であった。この量と見た目の差は何なのだろう。
それはそうと、3人でいろいろ話していると、後ろの団体客の言葉が聞き取れる事に気付く。
・・・・・・日本人だ。
なんでこの国は日本人がこんなに多いのだろう。
ふと、かなめが目の前のサンチュを手にとって硬直している。
不思議に思って要のサンチュを観察してみる。
「・・・・・・・!!!」
かなめが、俺の視線に気付く。
「・・・・・・見えた?」
「うん、ばっちり・・・・・・」
サンチュの裏にへばりついた・・・・・・****。
なにも気付かないいながき。
「えーーーーっと・・・・・・」
動揺を隠せない俺。始末をつけようとするかなめ。
ようやく異変に気付くいながき。
「え、なになに、どうしたの?」
「いや。知らないほうが良いこともある」
念の為、いちいちサンチュを確認し出すかなめ。
突然サンチュを食べなくなる俺。
気になって仕方がないいながき。
プルコギを食べ終わるかどうかというあたりで、二人組の客が入って来た。
「えーっと、何に・・・・・・」
日本人だ。
日本人多すぎ。
次は、海鮮鍋である。
小さい器が三人分用意された。
煮えるまでじっと待つ。
そろそろ煮えたころか。さっきの焼肉屋とは違い、自主性を重んじる店らしく、我々は自分でフタを開けて様子を見る。こんなもんか。
器にスープを入れる。1枚目、2枚目・・・・・・!!3枚目の皿が異常に汚れている。
そこで、店のおばちゃんを呼んでお皿を貰う事にした。
おばちゃんはにこにこしながら器を持ってくると、鍋の中身を入れる。
何故おばちゃんが器を2つ持ってきたのか、今もって謎だ。
おばちゃんは、我々がスープを入れた2枚の器を無視し、新しい器に具を盛る。つまり、おばちゃんの持ってきた4枚目、5枚目の器だ。
4枚目の器はかなめのもとに。5枚目の器は俺の目の前にきた。
そして、おばちゃんが次に取った行動は・・・・・・!!
3枚目の皿!!!!
汚いから取り替えて欲しかった3枚目の皿に鍋の中身を入れだしたのだ!!!
無言の3人。そして、嬉しそうなおばちゃん。
おばちゃんは3つの器に具をよそうと、満足げに去って行った。
そう。我々は戦いに負けたのだ。
無残にも3枚目の皿の犠牲者になったのは、いながきだった。
俺はいながきに復讐するのをやめた。そんな残酷な事、俺にはできなかった。
言葉数が減るいながき。
さて、海鮮鍋の味の方だが、なかなか美味しかった。カニの味がする。ていうか、カニ以外の何者でもない。韓国料理にしてはそれほど辛くはなく、カニの他にタコとか魚とか貝とかエビとかが入っている。
それにしても恐るべきは店のおばちゃん。韓国で出会った実に最強のなをほしいままにする強敵であった。
明洞のコンビニでいろいろ買い物をする。韓国産のレトルトカレー。日頃から辛いものばかり食べている民族だけに、レトルトカレーも辛いのであろうと期待する。初日に食べた餅みたいなやつも売っている。非常にポピュラーな食品らしい。そして、プリングルス!!驚くなかれ、全般的に日本の半分くらいの物価の韓国において、このプリングルスはなんと日本円にして300円くらい。日本経由で売られているのか?
そしていながきが・・・・・・・・
まぁいいや。
ホテルに戻ると、第一回モノポリー大会。3人モノポリーである。序盤はいながき独走だったが、3人モノポリーはデフレぎみ。みんな貧乏人のため、物件が競売に出されて本当に正規の半額くらいでも売れない。
そんな中、上手い具合にオレンジを揃えた俺が逆転。オレンジの恐ろしさを改めて感じた。
さて、いよいよ韓国旅行は3日目に突入する。