第4章 ソウルタワー

 

1.辿り着くまで〜過酷な山登り〜

相変わらず安いタクシーに乗り、我々はソウルタワーへと向かった。

ソウルタワーとは、南山公園とばれる場所にそびえる塔で、展望台がついている。高さは250メートルくらいだが、韓国人は東京タワーより高いという。標高250メートルくらいの山の上に建っているからだそうだ。一休さんみたいだ。

さて、タクシーから降りると、しばらく急な山道を登って行く事になる。これが結構きつい。これでもかという角度が、長い間続く。

坂の途中、幼稚園児くらいの女の子が、ちょっと進んでは止まり、坂のきつさにのけぞり、また進む……と、非常に苦労している光景に出くわした。案の定、女の子は途中で立ち止まって「これ以上進めない」的なアクションをしたのだが、その時、母親は目の前にお菓子をちらつかせる。すると、女の子はお菓子を取ろうと前に進む。母親は少しずつお菓子を遠ざける。目の前に人参をぶら下げて馬を走らせる、マンガみたいな状況を思い出してしまった。しかし実に厳しい教育だ。日本の親もこうあるべきなのだろうか。

そんな微笑ましい光景を見ていたら、気が付くと山の頂上に着いていた。われわれは、頂上で一休みすると、入り口でフリーパスを買い、ソウルタワーの中に入っていった。

中に入る前に、オバケ屋敷があった。韓国版お化け屋敷。面白いかもしれない。フリーパスを使って中に入ると、そこは不思議な世界。ここのオバケ屋敷は、暗闇の中足元に大きな布を放置したり段差をつけることで、物理的に転ばせたりつまづかせたりするという作戦を取っているようだ。そのため、お化けというか足元が怖い、という独特の恐怖感を味わわせてくれる。

オバケは、足をくすぐられてうひゃひゃひゃと笑う謎の巨人をはじめとして、基本的に日本人には分かりにくいものが多かったが、キョンシーがいたのにはなかなか好感が持てた。

 

2.ソウルタワー〜甘すぎるソフトクリーム〜

というわけで、ソウルタワーを登る。エレベーターなのだが、これがめちゃくちゃ速い。それまで乗ったエレベーターは遅く、「韓国のエレベーターは遅い」というイメージを持っていた我々にとって、その速さはショックだった。250Mを一気に上りきる。びっくりだ。

頂上からは、さすが標高500Mの雄大な景色を見ることができた。気のせいか、となりに東京タワーみたいな塔が立っているが、別に意識したものではない事を祈る。

ソフトクリームが売っているので、買うことにする。甘い。かなりのものだ。日頃辛いものばっかり食ってるから、反動で甘いものが食べたくなるのかもしれない。極端な民族だ。

展望も飽きたので、降りる事にする。フリーパスは、先ほどのオバケ屋敷や下の色々な博物館などに入るためのものだ。塔の入り口よりも低い所にエレベーターで降り、まずゲーセンに入る。

ゲーセンには、懐かしの名作「ギャラガ」や、「テトリス」、「ファイナルファイト」などが置いてある。もちろん全て日本製だ。ファイナルファイトは一面のボスで死に、ギャラガはロクに先に進めずジョイスティックの性能の悪さに文句を言っている所で、いながきがテトリス本日ベストスコアをたたき出した。

いながきはテトリスがへたくそな事で世界的に有名な男である。そのいながきが本日の最高点。いかんな、そんなことじゃ。

その後、お面博物館に行く。世界のお面が飾ってある。世界最大のお面や、妙に卑猥なお面があり、なかなかおもしろいのだが、ビックリしたのが日本のお面だ。どちらかというと「鉄兜」で、額の部分に大きなドクロが。いかにも邪悪な兜で、このデザインでドラクエに登場すると「不幸の兜」になってしまうだろう。

「そんな悪趣味なもん日本にはねぇ!」

と、思わず叫ぶ。こういう解釈しかできないゆがんだ先入観が異文化の理解を・・・・・とか思ったがまあ仕方ない。

帰りにみやげやの親父に妙になつかれた。どうも韓国人の商売根性は大阪人と似ている気がする。

 

歩いて帰るのは地獄なので、ケーブルカーを探す。かなり歩き回った後で、ようやく見つけ出し、チケットを買って待つ。乗り場に土産屋があった。

「・・・・・・?アイス5リットルだってよ」

「ご、5リットル?」

見ると、巨大なアイスの箱があり、5リットルで売っている。

「5リットルのアイスって、いくらだろう」

「1.5リットルなんじゃないの?」

「いや、5リットルだ・・・・・・」

「それ以前に、なんで山のてっぺんでアイス5リットル売ってるんだ?」

そんなこんなで、ケーブルカーがくる。ふと、俺のチケットがない。

「あ、ちょっとまってくれよ」

かなめはもう乗った後である。いながきは聞こえてるのに無視する。なんてやつだ。

仕方がないので、チケットを買いなおして乗る。まぁ、150円くらいなので別によいのだが、置いてかれて悔しいのでいつか仕返しをしてやるぞ、と固く心に誓う。

タクシーでホテルに戻ると、3人そろって爆睡。目覚めるのは夜の10時過ぎになる。

 

明洞