第2章 東大門市場

 

1.韓国到着〜力〜

というわけで、ソウルに着く。さっそく外貨購入。韓国の通貨はウォンで、1円=10ウォン(大体)である。最大でも10000ウォン札までしかない為、1万円両替すると1万ウォン10枚で10万ウォンになる。何やら非常に得をした気分だ。

空港の出口付近でツアーの参加者が集まるのだが、俺はそこで自動販売機を発見。さっそく、異文化の飲み物を調査する事にした。……何やら、ラインナップは日本とさほど変わらない。しかし……

「なんだ?」

見ると、180mlくらいの缶に、「力」とだけ書いてあるものが置いてある。なんのジュースだろう?缶をよく見ると、ちゃんと絵が書いてある。……なんと、竹の子のようだ。

「た、竹の子のジュース……???」

俺はここで買っておかないと一生後悔するに違いないと思い、1000ウォン札(100円)を自販機に投入。韓国での初の買い物は「竹の子ジュース」であった。

我々3人は、竹の子ジュースのタブを開け、まず匂いを嗅いでみた。………………………………やばい。

やばすぎる臭いだ。ちょうど、以前J太に貰った高麗人参ガムのそれと酷似している。もしかしたら、高麗人参ジュースだったのかもしれない。しかし、今となってはその謎も解かれずじまいだ。我々は一口ずつそれを飲むと、非常に嫌そうな顔をしてそのままくずかごに投げ捨てた。まさに一生後悔しそうな味であった。

今思えば、記念に空き缶だけでも持って帰れば良かったとやはり後悔している。

 

そうこうしているうちに、バスに乗り込んでホテルへ。我々の泊まるホテルはセントラルホテル。ガイドブックによれば、5段階あるホテルの評価のうち最低ランクである。+6000円でロッテホテル(最高ランク)にもできたのだが、それよりもむしろ他のことに金を使うべきだ、と言う理念を持って安ホテルに泊まることにした。

 

 

2.ホテル〜安ツアーの叫び〜

バスに乗り、数十分間ゆられながらホテルへ。このバスには2ランクのホテルに泊まる客がきており、当然我々は下のランクのホテルである。貧乏人はホテルに連れられるのも後回しであり、異常に長い時間先のホテルで待たされたあげくにやっと到着した。荷物を置くように、といわれ、我々は5階の部屋へ。しかし、部屋の電気がつかない。

「くそお、安ホテルめ」

俺は今回の旅行で思ったのだが、安い旅行と言うのは、旅のレベルがさがるということよりも、むしろどんなことでも安いせいにしてしまう事に問題があるのではないだろうか。本当はそんなこともないのだ。例えば、部屋の電気がつかないのは所定の位置にキーを差してないからであった。

だが、このホテルはそれ以前にやはり「安くてぼろい」点が多々目立った。

  その1 エレベータのボタン(5F)を押すと陥没する(引っ張らないと戻らない)

  その2 テレビはただのインテリア

  その3 部屋の鍵はなかなかささらない。フロントのおじさんにも難しい

  その4 部屋の鍵がときどき回らなくなる

  その5 水の味がヘン

  その6 風呂場で滑って転ぶ

  その7 9Fのビュッフェはいつも閉まっている

  その8 4Fがない(これは、日本の病院に4Fが無いのと同じような理由と思われる。しかし日本では4が死に結びつくが、韓国語でもそうなのだろうか?)

  など、枚挙に暇が無い。

  部屋をいろいろかんさつしてみると、色々面白いものに気付く。カレンダーは、それぞれ2月、3月、4月で1枚、つぎは3月、4月、5月で1枚、と常に前後の月が見られるようになっている。なるほど、よく考えたものだ。

  ついでに、休日を見てみる。まず2月14から17日まで。どうもこれは旧正月のようだ。そして、……3月1日。そう、あの3・1運動の日だ。むぅ。3月に来なくて良かった。

 

しかたなく、我々は下に降り、フロントにそのことをつげると、片道だけ(!)の東大門市場行きのバスに乗るのであった。

 

 

3.東大門〜ジャンクフードとカルチャーショック〜

そんなわけで、東大門市場である。市場に着いたのは夜中の12時ごろであろうか。デパートらしきものの前に下ろされた我々は、今が深夜であることを疑った。

明るいのだ。日本だと、午後6時半とか7時くらいの明るさだ。なによりも、人が多い。新宿とか渋谷の昼間ぐらい人がいる。

我々はとりあえず、デパートの中に入った。中は主に衣料品、雑貨などを売っている。店員のやる気はあまり感じられず、眠っているものもいた。全体的にごちゃごちゃしているものの、デパートだけに汚い印象は受けない。問題は外だ。

いながきが妹用にブランド品を探していたが、どうも本物かどうかいまいちわからないので、外に出ることにした。

機内食がいいかげんだったので韓国でなにか食べることにしたのだが、東大門市場の辺りはいろいろな屋台的なものがたくさん出ている。そこで、今日は韓国のジャンクフードをあさり、明日以降焼肉旅行を行う事にした。

しかし、この韓国と言う国、日本人観光客が多い。デパートの中では関西弁がこだまし、街を歩いていると数十メートルの彼方から日本語で呼びとめられる。人にぶつかれば日本語で「すみません」ときたもんだ。旅の目標その1「韓国人のふりをする」がいかにおろかな発想であったか。

さて、ジャンクフードその1は「かにかまあげぼこ朝鮮ケチャップ(仮称)である。カニかまを揚げかまぼこで包み、それに韓国特有のちょっとだけ辛目のケチャップをつけたものである。気持ち程度にカニっぽくて、なかなか美味しかった。

ジャンクフードその2は、アメリカンドックである。ソウル市内には至る所に屋台が出ているのだが、そのうちのほとんどの店にアメリカンドックが置いてある。アメリカンドックには亜流があり、アメリカンドックにパン粉をつけて更に揚げたものや、なにやら四角いパンくずらしきものをつけてボコボコに揚げたものなど、さまざまなアメリカンドックがおいてある。後者は以前日本で「チャイニーズドック」という名前で売っていた。

 

ジャンクフードその3。焼き鳥。これは韓国風味で、ちょっと辛めのたれがついている。また、朝鮮人参風味の焼き鳥(ねぎま?ねぎ部分が朝鮮人参っぽい)もあり、ちょっといやだった。鳥部分は結構行けるのだが。

 

 

 

 

ジャンクフードその4。辛い餅(仮称)。これは、コンビニなんかでも家庭用として売ってたりする。辛いもちというのは語弊がある。正確には、「辛いソースにからめた餅」である。7cmほどの長さのちょっと太目の棒状になっている餅を、辛いどろどろのソースにからめて焼く。このソースが、辛い。めっちゃ辛い。そして、くどい。何が混ざっているのかわからないが、5本目くらいから飽きてくる。最初の何本目かまでは結構おいしいので、なかなか惜しい所だ。

 

 

ジャンクフードその5。玉子今川焼き(仮称)。数日後に「玉子パン」という日本語で売られていた。これは、一見今川焼きをちょっと楕円形にしたような形をしているのだが、中に入っているのは目玉焼き状の玉子丸ごと一つである。ちょっと想像してもらえれば分かるが、日本の今川焼きに卵を入れたところで、皮にも具にも味がつかない為あまりうまくない。だが、この国の玉子今川焼きは、皮自体が甘く、ホットケーキ系の味をしている。そのため、全体として結構おいしい。ちなみに、日本円にして50円。お買い得である。

 

 

ジャンクフードその6は、フライドチキンである。いながきが妙に気に入っていた。1500ウォンで、ケンタッキーより大きなチキンが買える。味は普通だが、いながきは「10点つけてもいい」とか言っていた。

 

ジャンクフードその7は、ピザ巻。セブンイレブンに売っているブリトーを少し小さくした感じだ。味は、可も無く不可も無く。ブリトーとあまり変わらない。

 

 

 

 

 

ジャンクフードその8。うすいせんべい。濡れせんべいみたいな奴で、なんかかめばかむほど味が出る。せんべいではなく、なにか魚系のものが原料であると思われる。

ジャンクフードその9。カレーパンもどき。といっても、中に入っているのはカレーではなく、どちらかと言うと野菜みたいなものをごちゃごちゃ入れてちょっと辛めに味付けした感じ。結論から言うと、いまいち。

 

 

ジャンクフードその10。ちぢみ。韓国風お好み焼きで、かなめの立っての希望で屋台の中で食べた。店先に出ているときはでかいお好み焼きだが、注文して出てくると一口サイズにちぎってあり、しょうゆ(ポン酢?)みたいなものに漬けて食べる。かなめは気に入らなかったらしい。

 

 

しかし、どの屋台も似たようなラインナップで、1時間ほど歩くともう飽きた。パターンが同じなのである。しかし、街のパワーは凄まじく、どうするんだよこれっていう量の道端に捨てられた膨大なゴミや、午前1時30に自転車で走り回る小学生、多分日本なら一日5回は死ぬな、という車の運転の荒さなど、見るべきものは多かった。 

ところで、町の汚さには本当に驚くのだが、いながきはここで仮説を立てた。よく見ると、道行く人は何の疑問も無くいきなりゴミをそのへんに放り投げる。恐らく、汚いからその辺に捨てちゃえ、という発想が循環しており、どんどん街は汚れて行くのであろう。

韓国人になるには、その辺に躊躇無くゴミを捨てられる倫理観を手に入れなければならないのかもしれない。そして、俺は3日以内にはそれを習得するぞ、と固く心に誓った。

なお、俺はこの街でスピードのCDを買わされた。15000ウォン。まぁ、新品で手に入るならいいか。

 

帰りはバスが無いので、タクシーを使う。これが安い。

韓国には一般タクシーと模範タクシーがあり、後者は主に言葉の違う旅行者用に運営されているものだ。料金は前者が初乗り2Kまで130円、後者が3Kまで300円。大体の所ならば模範タクシーでも300円ですむので、3人で行くと一人100円。激安特価である。日本のタクシー業界がいかにぼったくっているかが分かるだろう。

 

というわけで、ホテルに300円で帰ってきた3人は、明日に備えて寝るのであった。

 

焼肉