第4章 古代都市ローマ(4日目)


1.恐怖の子供たち


ギリシア最終日。

モーニングコールが鳴った。モーニングコールを取る係は、自動的に受話器のそばで寝ているIsomuraである。だが、なにやら文句を言っている。

「俺の計算では、まだなんだけど」

何が「計算」なのかよく分からなかったが、後で聞いたらこいつは旅行中ずっと「日本時間」の目覚ましを利用していたらしい。
で、時差を差し引いた計算の結果、まだ深夜。おかしい。仕方ないので、二度寝。

また、鳴る。だが、まだおかしい。

三度寝。また、鳴る。
今度は、電話を取るIsomura。もしかしたら、東京から緊急の連絡かもしれない。

"hello?"
すると、返事があった。
"How are you?"

子供の声。
…………?? プチッ

電話が切れた。
どうやら、さっきの外人のガキがイタズラ電話をかけてきたらしい。
すっげぇむかつく。

というわけで、4日目。今日は、ローマへの移動日。
イタズラ電話はうちだけではなく、色んな人にあったらしい。国籍を聞かれた人もいたそうだ。

ちなみに、モーニングコール(正式)は、5時。本当に過酷な旅行だ。サンドイッチやオレンジジュースをお弁当としてもらい、ローマへ。


2.コーネリア

アテネからローマは2時間掛かるのだが、時差のせいで1時間ということになる。というわけで、8時ごろローマについてしまう。

ホテルは、「プリンセス」。ヴァチカンの西にあり、ガイドブックに微妙に載らないエリアにある郊外っぽいホテル。見た目は豪華だが、中に入るとそんなことは無く、何しろホテルについたのが早すぎて部屋が開いてない。しかも、ここの通貨「リラ」を持っていないので、ホテルで両替しようとすると断られた。何なんだ。

結局、ホテルまで案内してくれたおじさんに頼んで1000円分だけ両替してもらったが、他の人はどうしたのだろう? 空港で両替する時間なんて、まったくなかったぞ?

しばらく待って、やっと部屋に行く。トイレには、
「トイレから出るのにちょっとコツがいる」
「水を流すスイッチがなんと頭上にある」
「トイレットペーパーが逆向きに入っている」

などの三つの罠が隠されていてビビった。

さて、もたもたしていられない。出発である。
しかし、駅までがこれまた遠い。非常に使えないホテルだ。道行く人に駅を尋ね、辿り着いた駅は始発の隣の駅「コルネリア」。FFIの最初の町の名前だ。それにしてもこのホテル、中心から離れすぎである。



3.テルミニ〜スペイン広場〜トレヴィの泉

地下鉄に乗り、テルミニへ。テルミニは、ローマの中心の駅である。地面を掘れば遺跡が出てくるこの町では、地下鉄はあまり作れない。A線・B線二本の地下鉄のみが走り、それが交差するのがこのテルミニ駅である。

ここでの目的は、明日のサッカーの試合のチケットを買うこと。予約無しでいけるものかと思いきや、意外と楽にチケットが取れた。だが、実物は18時頃もう一度来ないと手に入らない。115000リラは結構高かったが、いい席らしいので良しとする。

その後、昼飯を食う。
シーフードのスパゲティ
ピザ・カプリチョーザ
ピザ・リッチ&ベーコン


であった。ピザはでかく、生ハムなどが乗っている。スパゲッティは美味かった。さすがは本場。

その後、我々はスペイン広場へ。
スペイン広場は「ローマの休日」で有名な広場だが、俺は観たことが無いのでよく分からない。人で溢れかえる広場の周辺には焼栗屋がいて、いかにもローマの町といった雰囲気。中央に噴水を構えるスペイン広場の裏にある、有名な「スペイン階段」には警官も結構いた。なぜかドラゴンボールZのポスターを売る人々なども。

さて、弟に頼まれていた「プラダのキーケース」を買い(結構時間が掛かる。途中でIsomuraが飽きて「ローマの休日ごっこしに行く」と去っていった)、再び町で両替。なぜか「二千リラ」を「フラン」に両替しようと苦戦している関西人の女二人が苦戦してて時間をロス。二千リラは、最低額の50フランに満たないから、両替できないと言ってるのに分からないらしい。

その後、ジェラート(ティラミス)を買う。なお、ギリシアの専売特許かと思っていたが、この店にもピスタチオナッツアイスが売っていた。まぁいいとしよう。

歩いてトレヴィの泉へ。ここは、後ろ向きにコインを投げ入れるともう一度ローマに来れるという伝説があり、俺は世界制覇の意味も込めて3カ国のコインを投げ入れた。Isomuraはなぜか正面からドラクマを投げ入れていた。

次に、クイリナーレの丘へ。何となく行ってみたのだが、丘に登ると警備員&人だかりができていて、いかにも何か始まるオーラ。すると、その瞬間なにやら行進が始まった。いいタイミングに来たものだと思ったが、行進はあまり揃っておらず、軍人達はよそ見ばかりしていて今一だった。


4.パンテオン〜ナヴォーナ広場

コロッセオを探しながらうろつき、BARへ。別に酒は飲まないが。ここのトイレは螺旋階段をかなり下ったところにあって、その多大な労力の跡に、ローマ人の「トイレを生活空間から遠ざけよう」という意図が感じられる。それくらいこの町にはトイレが少ない。BARで作戦を立てた結果、コロッセオが閉まっている事が判明したので、パンテオンを目指す事にした。

途中、大教会を見つけ、入る。かなりでかい。ノートルダムに匹敵しかねない。イエズス会の教会だったらしく、イグナティウス・ロヨラの煌びやかな像や、リアルなキリスト貼り付け人形があった。懺悔室で懺悔している人もおり、さすがカトリックの国である。ザビエルの本なんかも売っていた。この教科には、Isomuraが偉く感動していた。

その後、サンタ・マリア何とかと言う教会に入り、パンテオンに到着。パンテオンはかつて古い神々が収められていたのだが、今はキリスト教の建物。入口はパルテノンに似ているが、横から見ると全然別物。天井に丸い窓が付いているのが特徴である。

そのまま、ナヴォーナ広場へ。ここにも教会があり、入口には「セニョールセニョーラ……」と繰り返すおばあさんが座っていた。教会自体はしょぼかった。

この三つの噴水が印象的なナヴォーナ広場は、勝手に人の腕にミサンガをつけて売りつけようとする男がいたり、緑色の自由の女神が立っていたり(大道芸)、幼児を魅了する指ダンサーなどがいて、実にのどかだった。

その後、タクシーに乗ってエスクィリーノ広場へ。つまり、さっきチケットの予約をした店である。ここでチケットを手に入れ、歩いてテルミニへ。バルベリーニという駅で降りて、晩飯を食う。

食ったものは、


ミネストローネ:米が入っている。ちっともトマトっぽくない。
ラザニア:本場の味。だが、予想通りの味でもある。
バニラアイス:量が多い。お酒が入っている。


Isomura
野菜スープ:ミネストローネと酷似。米はない。
サラダ:オリーブ、ビネガー、塩コショウをつけて食べるようだ
サルティンボッカ:牛+ベーコンに、ソースが掛かったもの。味が濃いらしい。
フルーツ
ガス入りウォーター


この国ではガス入り水が流行っており、油断するとガス入りを飲まされるのだが、Isomuraは敢えてここでガス入りを頼んだ。俺も明日呑んでみようと思った。この店は、ローマ人で賑わう良い店だった。


4.銃撃戦と4つめのワナ

帰り、駅に向かう途中、なんと街で銃撃戦が始まった。
大勢の白バイ警官が、そばの道を爆音を響かせながら、何かを追いかけていく。そして、「パン!!」という耳をつんざく音が数回。マジで怖い。

尚、帰りの地下鉄には、見るからに不良少年達が大騒ぎで、非常にうるさかった喧嘩まで始める。日本のヤンキーよりもたちが悪い。

コルネリア駅からホテルへは、かなり遠い事が分かっていたので、タクシーを止める。

「プリンセスホテル、OK?」
「OK」

だが、この運転手、全然道がわかってない。結局、途中で止めて歩いて帰る。やれやれ。

ホテルで水を買ったら、巨大なガラス瓶をくれて、栓抜きでフタを開けられた。一升瓶みたいな奴。どうしろというのだろう? 部屋へ戻る途中、見知らぬ二人組に
「開けてもらったんですか?」と聞かれた。なぜだろう。

さて、寝る前に風呂。
だが、ここで初めてトイレ4つめのワナに気付いた。

………カーテンがない????

どうやって入るんだ???

結局、湯を張ってそーっと入ることで、水が湯船の外に極力出ないように頑張った。が………

無理だろう。おい。

かくして、床はびしょ濡れになった。

世界征服の暁には、ガス入りの水を廃止しようと固く心に誓う。

第五章 ヴァチカンへ