第3章 エーゲ海クルーズ(3日目)


1.ドラえもん 〜のび太と地中海旅行〜 

アテネ二日目。今日はエーゲ海クルーズの日。
このホテル、外がうるさい。すぐ外の道が込んでいて、車は皆とりあえずクラクションを鳴らすのである。この傾向はアテネだけでなく、ローマでもカイロでもそうで、いかに日本の車社会に品があるかを象徴している。

そして、5:00にモーニングコール。相変わらず過酷なツアーだ。
6:00にロビー集合と言っていたが、行ってみたら6:30と言われた。なんなんだ。丁度時間ができたので、朝飯を食って出発。

エーゲ海ツアーのガイドの人は、大山のぶ代である。
本名があったはずだが、声があまりにもまんまドラえもんなので、忘れてしまった。

さて、船は結構豪華なものに乗るようだ。中に入るとやけにラテンなノリの人々が一階で踊っていた。このクルーズは、ポロス島、イドラ島、エギナ島の三つを巡ってアテネに戻る。

最初のポロス島までは二時間。その間、ダラダラと過ごす。水は綺麗だ。島に近づくにつれ、エメラルドグリーンの海水になっていく。こんな綺麗な水を見たのは初めてだ。

途中、俺が売店で水を買うと(500ml、日本円で70円くらい。きわめて普通の値段)外人に喧嘩売りたがりのIsomuraが「Expensive!!」とか言って店の兄ちゃんに睨まれる場面もあったが、船は無事にポロス島へついた。


2.ポロス島

ポロス島は、時計台の町。何しろ、道の途中に日本語で「時計台」と書いてある。だが、時計台に登ってもなぜか時計が掛かっておらず、したがって不本意ながら、単なる「台」の町であるといわざるを得ない。

のどかなこの島では、なぜか民家の裏にクビだけバービー人形などシュールな物が洗濯物と一緒に飾ってあった。また、この町には犬がたくさんいて、犬写真家のIsomuraがあくびをする犬を撮ると、犬がこっちに歩いてきた。まさにFF8の世界である。

さて、ポロス島からイドラ島に向かう途中で、昼飯。
向かいの席に座っていた、同じツアーの日本人カップルが、昨日パスポートを無くした事件などを語っていた。
さて、食事の内容はオリーブ系の何やらを挟んだパイ、スズキのムニエルホワイトソース、デザートにケーキなどがついた。ワインが別料金なのが気に入らなかったが、まぁいい。スズキのムニエルはさすが地中海であり、かなりうまかった。
このとき、Isomuraが落としたマフラーを届けられる。ドラえもんは見ていた。


3.イドラ島

二つ目の島・イドラ島。綴りはHydra島なので、恐らくギリシア神話のモンスター・ヒドラから来ているのだろう。ここは車が全く通らず、ロバの町である。やたらとロバに乗せたがる人々が住む島。だが、ここでロバに攻撃されそうになり、危うく死にかける。これ以降、俺は巨大生物の背後恐怖症になった。

この島の売店で、200ドラクマの水を買う。で、10000ドラクマ紙幣をだそうとすると、ものすごく嫌がられた。日本円換算すると、70円のものを買うのに、3500円札を出した感じである。だが、小銭は200ドラクマも無いという話をしたら、有り金の90ドラクマで許してくれた。さすが島民はいい人が多い。
ここで、Isomuraは「ドネルケバブ」を買っていた。ピタと言う薄いパンに、チキンの削った奴などを挟んで食べる、ファーストフードみたいな料理である。中々美味しかったが、紙を食ってしまった。

この島でわれわれはトイレに行きたくなったので、ご都合主義的に目の前の建物に掛かっている「W.C」とかかれた看板に従ったが、全ての扉が鍵で閉ざされていたりして、我々の怒りを買った。また、ここはやたらと猫の多い島で、まさに猫の楽園と言った感じだった。

三つ目の島に行く途中、船の中で一人旅の女の人が我々の席に来た。
関西出身らしく、トルコ・アテネと旅をしているらしい。関空と大阪の距離を熱く語っていた。



4.エギナ島

さて、いよいよ最後の島・エギナ島。
アポロン神殿が遠く見える、3島最大の島である。何とか神殿へのツアーがあったのだが、それには参加しなかった。というのは、何でも、ドラえもんについて行くと、タコを食わせてもらえるらしいのである。

ここは漁師の村らしく、ついでにピスタチオナッツの名産地のようだ。ドラえもんにいくつかギリシアの話を聞いた。例えば、ギリシア人は、「昔話」のような形でギリシア神話について知っているらしい。だから、日本人の日本神話に対する知識よりははるかに詳しいようだ。

で、タコ屋に行く。入口でタコを丸ごと焼いていた。タコを注文。これが、うまいのだ。すげぇうまい。まさにたこ焼きである。ドラえもんに醤油を分けてもらって、かけて食べる。日本の味。さすがドラえもん、何でも持っている。また、赤貝の焼いた奴も食った。結構焼きあがるまで待たされたが、その価値ありだ。赤貝って、ちゃんと殻に入ってたんだな、と当たり前の事実を再認識。

ここでIsomuraがマフラーを忘れて、またもドラえもんに注意される。

ピスタチオナッツの町と言うからには、ピスタチオナッツを食わねばならぬ。その辺の店で一つつまみ食いをし、アイス屋でピスタチオアイスを食った。予想外の緑色をしていた。また、この町でIsomuraはスポンジを買っていた。なぜかアテネには町じゅうに天然スポンジが売っており、風呂用に購入したらしい。今思えば俺も買っておけば良かった。

エギナ島の喫茶店にはいる。グリースコーヒーというのがあった。Isomuraが注文。買うときに「水はいるか」と聞かれたが、断っていた。だが、これが意味していた物は……

少しもらったが、滅茶苦茶濃いのだ。そう。これは、水で薄めて飲むものだったのだ。粉コーヒー。インドのコーヒーに似ている。

エギナ島でダラダラ過ごし、アテネへ戻る。
その際、船の中でギリシアの民族ダンスなどを鑑賞する。

「ギリシアの踊りは、手ではなく足の動きを見るんです!」

と言われたが、俺らの席からは微妙に踊っている人々の足が見えず、仕方なく見えない部分を想像するしかなかった。だが、遠めにもなにやら達人的な器用さで足が我々の理解を超えた動きをしているのは分かった。

それにしても、ギリシア人はやけに乗りのいい人々であった。陽気。

船がアテネに着き、ホテルへ。数時間寝たら町に繰り出そうと言っていたのだが、疲れすぎていて結局起きられなかった。

しかし。

ホテルについたときに、集団の外国人客が訪れていた。
年はまさにティーンエイジャー。
彼らが、我々の旅に多大な影響を及ぼす事には、まだ誰も気付いていなかった・……

世界征服の暁には、赤貝は殻付で売らせようと固く心に誓う。

第四章 古代都市ローマへ