5.物件の買い方
初心者が一番困ることに、物件の買い方がある。何を買うべきか、何を買ってはいけないのか。
時と場合に合わせた買い方を、ここに紹介する。
(1)基本的には
特に序盤に言える事。止まったら買え。よっぽど間が悪くなければ、買ったときよりも高く売れる。
買わないとどうなるかというと、競売になって「定価よりも高くてもいい」というほかのプレイヤーが手に入れてしまう。定価よりも高くていい、というプレーヤーが手にするということは、それだけの価値がそのプレイヤーにあるということ。高く売れるということよりもむしろ、そういう人にその物件を渡してしまうことの脅威を防げるところにメリットがある。
(2)公共会社について
公共会社は、特にちょっとモノポリーをやったことがある人は、やけに敬遠したがる。恐らく、レンタル料の最大値の低さからだろう。仮に12を出して止まったとして、最大120ドル。これでは、威力不足を感じてしまうのも無理はない。
だが、果たして本当に公共会社を買うのは損なのかというと、実は全然そんなことはない。一つだけだと平均28ドル。これは、グリーンの土地のみレンタル料に匹敵する。にもかかわらず鉄道・電力会社の定価はグリーンの半分。もともと土地だけでは投資の回収が難しいこのゲームだが、この小遣い稼ぎは後に生きてくる。もちろん揃えれば投資の回収は一気に楽になる。平均70ドル。2回止まれば、レッド・イエローレベルでも家が1軒建てられる可能性が高い。
揃えやすいというところも魅力だ。カードにも公共会社への移動が二枚入っている。買っておけば、揃えるにしろ揃えさせるにしろ、結局誰ももう片方の会社を手に入れられなかったということが少ない。しかも、片方だけでは役に立たないし、揃えさせてもそれほど脅威ではないので交渉がスムーズに終わる。
以上のことから、少なくとも序盤のうちは、公共会社は非常に扱いやすく、効果的なグループであることがわかると思う。だが、後半、家が立ち並ぶ状況になると話は変わる。平均70ドルという額は、後半から終盤にかけて相対的に非常に価値が落ちてくる。そうなると、誰も買ってくれない。みな、自分が他のプレーヤーの家に入ることを恐れて無駄な出費をしなくなる。なにより現金がない。こうなると公共会社はゴミ同然。序盤は大きかった70ドルも、雀の涙同然にしか感じられない。
もしも序盤から中盤にかけての間に公共会社を手に入れられるのなら、迷わず買うこと。そして、後半に差し掛かった頃に買う買わないの選択を迫られたら、よほど現金に余裕がない限り見送ることだ。
(3)グリーンについて
中級者以上、あるいはそのあたりと一緒にモノポリーをやったことのある人たちは、グリーンを定価で買うことを敬遠する。なぜグリーンは敬遠されるのか。
グリーンの項でも説明したが、グリーンは非常に足が遅い。物件は高いし、家は建てられないし、止まる確率も低い。当たればでかい魔神の斧。当たらないのが悩みの種。
多くの場合、グリーンは定価だけの働きをしない。だから、もしグリーンに止まったら、特別にグリーンを使った作戦などがない限りは、極力競売にかけよう。うまくすれば定価よりかなり安く手に入るし、買わなかったとしても厄介払いをした気になれば悔しくない。
だがもしも、周りのプレイヤーがあまりにグリーンを軽んじているようであれば、積極的に揃えていってもいい。どちらにせよ定価では買わないが、どうせグリーンは3枚目にでもならなければ競売で定価を超えることはほとんどない。グリーンは揃って家が建ってしまえば非常に強力なので、逆にグリーンを必要以上に敬遠しているプレイヤーの裏を書くのも面白いだろう。
(4)お金がないとき
止まったら何でも買え、とはいうものの、現金が少ないときは如何ともし難い。いらないものを買っても、という気になる。
本当にお金がないときはそもそも物理的に買えないのだが、初心者は「お金がない」の程度が非常に甘い傾向がある。特に序盤、手持ちのお金が結構あるのに後々のことを考えすぎて物件が買えない。これは損である。
考えてもらいたいのだが、序盤など、どう考えても一周で大した額は取られない。鬼のようなサイコロ運の人がすごい勢いで鉄道王になったり、死ぬほど運の悪い人が税金を取られた上に各プレイヤーに50ドルずつ払ったりしない限りは、基本的には回れば回るほどサラリーによって持ち金額は増えていく。
盤の状況にもよるが、まず現金がゼロになる手前くらいまで、止まった場所の物件は買ってもいいだろう。いざとなったら物件を抵当に入れればいい。GOを通れば200ドルもらえるのだから、目先の現金よりも投資が先決である。いざとなれば、現金がなくても手持ちの土地をひっくり返して(抵当に入れて)物件を手に入れるくらいの意気込みが必要である。
ともあれ、本当にお金がないときは買えないし、他にお金の使い道を考えているのならば、見送る手段はあるだろう。それはケースバイケースだ。
(5)カラーグループが揃っているとき
カラーグループが揃っているときは、家が建てられるときだ。その場合、果たして手持ちの現金を家のために使うか、それとも目の前の物件を買うために使うか。この選択が実は一番難しい。
カラーグループが揃っているときに物件をさらに増やすというのは、主に防御目的だ。誰か他のプレイヤーがその物件を手に入れないように、自分が買ってしまう。これは非常に効果的である。
一方、目の前の物件を見逃すということは、家の建設を狙った攻撃目的といえる。自分の資金状況や場の状態によって臨機応変に動きたい。ここでは、止まった土地の価値による対応の一例を挙げる。
1) その物件が、場の状況を見たときにあまり価値がなさそうか、あるいはよく分からないときは、見送ってしまおう。例えば、誰も揃えそうにないカラーグループ。持っている分にはいいが、そのために自分の家を建てるスピードを遅めてしまっては意味がない。時にはオレンジの1枚目や2枚目なども、見送る勇気が必要。仮に競売になっても、他のプレイヤー同士でつぶし合ってある程度適正な値段にはなるはず。
2) もしもその物件が、確実に高い値段で売れそうならば、買うべきだ。高く売れればそれだけ自分が家を建てる資金が増えるということだし、逆に高く売れるということは、自分が持っていることで他のプレイヤーの脅威を防げるということ。その物件を手に入れる価値は十分にある。
問題は、一時的にであるにせよ自分の現金が減少すること。そして、確実に売れるかどうかなど実際には分からないこと。自分の現金が減るということは、危険が増えると同時に家を建てるスピードが遅れるということだ。家が建てられる状態で、物件が買えるときはよく考えて行動しよう。
(6)特殊な方法論
これまでの理論を覆す斬新かつギャンブル性の高い方法論。
やり方は、ひたすら止まった土地を何も考えずに競売にかける。とりあえずはこれだけ。
競売というのは基本的にはタダみたいな値段からどんどんつりあがっていき、やがてもし他のプレイヤーにとって価値があると判断されたものについては、定価を大きく上回る。逆に、価値が認められなかったものについては定価を下回ることもある。そして、どうも止まった土地の物件は定価で買っても、競売では定価を出すのはあほらしいと考える者が多いようだ。
そのあたりの心理を利用したのがこの「競売理論」である。
すべての土地が、みんなにとって価値のあるものではない。8色あるカラーグループのうち、誰も欲しがらない色が絶対にあるはずである。そして、その色は普通よりも安く手に入るのではないか。逆に、それ以外の色は誰かが必ず必要以上に高い金を出して買ってくれるのではないか、と。
敵の不幸は自分の幸福。必要以上に高い金を払ったプレイヤーよりは、自分は有利なのである。しかも、自分の懐は全く痛まない。みんなが貧乏になり、物件を比較的安い金額で手放すようになったら、みんなが不要と感じるカラーグループを買占めに回る。これは、プレイヤーが少ないとデフレが起こるという理論を利用したテクニックだ。すべて競売にまわせば、自分はゲームに参加していないのと同じ。その上、他のプレイヤーはいつもより多くの金銭を失う。これがこの戦法の理屈だ。
筆者はモノポリーをはじめてまだ間もない頃、熟練者にこれをやられて優勝をかっさらわれたことがある。なんでこんなアホみたいな戦い方で優勝できるのか、と思っていたが、理詰めで考えるとこういう意味があったのかと思う。